貴船神社の七夕祭りのライトアップを鑑賞するついでに、貴船の料理旅館“ひろや”で川床料理を堪能した。
ひと月前に予約を入れたが、七夕の頃の京都はまだ梅雨開け前であろうとたくさんある貴船の川床でも料理のおいしいところをと思い“ひろや”にした。
というのも、雨が降った場合は川床ではなく部屋食となるため、生憎の時のため、せめて料理のおいしいところを考えた次第。翌日が7月7日の貴船神社の大切な例祭”水まつり”であったが、裏千家による献茶のあとの茶席の本席は常に”ひろや”の大座敷で行われるとの由。実際に貴船神社の鳥居前にその旨、案内が記載されていた。
その深慮遠謀は幸か不幸か見事に当たってしまい、当日の空は雨模様。奥宮と結社(中宮)の参拝を終えた3時過ぎに雨が降り出し、少し雨脚が強まってくる。
幸いに貴船神社総本宮は“ひろや”の真ん前。折り畳み傘一本だったわたしたちはそこで大きな傘をお借りし、総本宮はまったく濡れることなく参拝できた。ひろやの予約は5時であったが、早めの4時前に入店。
やはり雨のため、残念だが部屋で食事とのことで、座敷へ案内される。畳部屋であるが、最近増えてきたテーブル席であった。部屋から川床が見おろせる。
仲居さんが「雨が上がれば、途中からでも川床へ移動しますが」との有り難いお言葉。
料理は八寸からはじまる。
夏の趣向を凝らした料理には、お〜っ!と歓声が上がるほど。
若鮎が貴船の渓流に游ぶかのように塩で川の流れを描いた鮎の塩焼きは箸をつけるのがおしいほどの出来栄えである。
味はもちろん、焼きも頭からかぶりつけもの、なかなかであった。
天然氷でしつらえた器に盛られた刺身も、涼感を誘い、目も喜ばすなかなかなエンターテイメントであった。
そんなこんな、煮物、椀物などをいただいた食事も後半に、雨が上がり川床の用意が成ったということで、川床へと移動した。
川床の席へ座ると瀬音が耳を聾すほどで、自然の中に身を置いて食事をいただいているという実感は120%、爽快感も急上昇!!
そこで、残りの食事の天麩羅などをいただきながら、熱燗の日本酒を一献。7月というのに雨あがりの天気ということもあり、肌寒かく感じたのである。
陽も落ちて提灯に灯も燈ると、川床の風情もまた一段と興趣を枡。お客がチラホラと集まって来て、賑やかな談笑が始まっている。
しかし、耳に届くのは川音のみで、お客の満面の笑顔が目に入るのみである。
食事を終えてからは、仄かに暗くなった貴船神社境内でライトアップされた笹飾りを鑑賞した。
その後、“ひろや”の車で貴船口まで送っていただいた。
京の奥座敷、貴船の七夕の日、貴船神社をゆっくりと逍遥し、川床料理を堪能しつくした充実した一日であった。