アップ遅すぎ! 横手の“雪まつり” (1/2) 横手城・平安の風わたる公園(2015.3.25)

ドイツの建築家ブルーノ・タウトも絶賛したという“かまくら”は、水神様をまつる横手の小正月行事で、毎年2月15、16日の夜に行われる伝統行事である。

1・かまくらから漏れる橙色
羽黒町武家屋敷通り

わたしは今を去ること50数年前に小学館発行の小学一年生か二年生の記事で“かまくら”を知り、そして、雪国の生活に憧れた。その憧れた夢が叶ったのが、この日である。

2・プチかまくらが行燈のよう
武家屋敷の塀沿いにミニかまくらが並ぶ

古い伝統をもったものだとは思っていたが、今度訪ねて、びっくり。なんと420年の伝統を誇るというではないか。


武家社会では災難を除き子供の無事成長を祈り左義長のかまくらが行われたという。また、町人社会では町内の井戸のそばに雪穴を作り、水神様を祀り、良い水に恵まれるようにと祈ったのだという。

3・水神さまです
水神さまを祀ります

こうした子供を慈しむ心や自然信仰の合わさった素晴らしい習俗が、関ヶ原の戦いという天下分け目の大いくさの頃からはじまっているというのも、この日本、どうしてどうしてそう捨てたものでもないなと感じ入ったところである。


当日は、まず、タクシーで羽黒町武家屋敷跡へ向かった。そこから歩き出して、ぐるっと市内のかまくらを順番にのぞいてゆくことにした。

4・武家屋敷
武家屋敷

武家屋敷通りにはいると辺りは暗闇であったが、雪道をしばらく歩くと遠くに橙色の燈りが見える。かがり火が焚かれていた。

5・除雪したところにかがり火が
かがり火も焚かれています

しばらくゆくと小さな藁くつがおかれた“かまくら”から、「はいってたんせ」、「おがんでたんせ」という幼い声が聴こえる。小学生だろうか布で作った蓑帽子にちゃんちゃんこを着た少女二人とその母親らしき方が中へどうぞと招いてくれる。

6・お餅や甘酒のおもてなしを受けます
はいってたんせ!

「かまくらに入ってください」、「水神様をおがんでください」という意味だそうで、われわれも靴を脱ぎ、火鉢を囲ませていただいた。


そこで、甘酒やおもちに太巻き寿司がふるまわれたが、見ず知らずの人間と会話をし、こうしたご接待をする様子は何とも気持ちがすがすがしくなったものである。

7・焼いたお餅がふるまわれます

四国遍路のご接待文化やこの北国のおもてなし文化をみると、昨今の殺伐としたこの国、本当は優しい国民性をもった日本人がそもそもはたくさん生きているのだと思い直したところである。


羽黒町の突当りに横手南小学校があった。その校庭一面にはミニかまくらが作られ、それぞれに燈明が灯されている。まさに幻想的な光景である。二日ほど前に、ここがTVで紹介されたと家内が教えてくれた。なるほど絵になる景色である。

8・小学校の校庭に造られたかまくら

次にかまくら館近くにゆくと、元気の良い「はいってたんせ」が聴こえる。そこで、また、お邪魔をする。横手北中学校のバスケット部の二人である。新田由直君と藤坂月(るな)君である。

9・ガンバレ! 横手北中バスケット部

快活で素直な二人に、われわれ夫婦もなんだかほっこりして、お餅もすすみ会話も進む。愛らしい藤坂君が新田君はバスケの秋田県代表なのだとかで、そういわれてみるとずいぶんと背が高そうだ。


訊いてみると、183cmあるのだとか。まだまだ身長は伸びそうでこれは将来の全日本も何とかなりそうと考えた次第。そんな若人の夢を奪うような日本バスケットボール協会のゴタゴタ騒動、早く何とかせい!!と一喝せねばなるまい。横手北中バスケ部、頑張れ!! おじさんも応援してるぜ。


最後にホテルプラザアネックス横手前に作られた“かまくら”に寄って、そこでホテルの従業員の方々からトン汁をご馳走になり、二人のお腹はもういっぱい。

10・ホテル前のかまくら
炬燵で豚汁、おいしかったですよ

そして、早く温泉につかろうとホテルに戻り、横手の“かまくら”を愉しむ夜は天候にも恵まれ、人の温かい気持ちにも触れられた素晴らしい旅のひと夜となった。


そうそう、忘れてならないことがひとつ。ここ横手は恋人の聖地に認定されおり、ハート形の“かまくら”があったことを報告せねばならない。われわれもその中に入り、記念写真をパチリしました。

11・ハートのかまくらもありました
恋人の聖地です、みなさんもどうぞ

二日前はひどい吹雪でかまくらめぐりもそこそこにホテルに舞い戻るお客さんがたくさんいたというから、この雨男、今年の旅はひょっとして汚名返上となるかも知れぬと思ったものであります。


横手の皆様、ほんとうに素敵なおもてなし、ありがとうございました。