茅野市豊平4734-132


長野県茅野市にある”尖石(とがりいし)縄文考古館”を久しぶりに訪れた。

1・尖石縄文考古館
尖石縄文考古館

思い立った契機は蓼科の道を走っていて道路の両側に縄文のビーナスと仮面土偶をあしらった幟をそこここで目にしたからである。


縄文のビーナスは昔、尖石縄文考古館で見たことがあったのだが、仮面土偶を観た記憶はなかった。


仮面土偶を初めて見たのは、二年前に辰野へ蛍狩りに行った際に立ち寄った辰野美術館でのことであった。

2・辰野美術館
仮面土偶を展示する辰野美術館(上伊那郡辰野町)

その時、写真で見たことのある宇宙人のような遮光器土偶を想起し、不思議な土偶が長野にもあるのだなと感じたことを思い出した。辰野美術館の仮面土偶はここをクリックしてください。HP所蔵品サイトへ飛びます。


そして、これは新しく発掘されたものであるに違いないと尖石縄文考古館を訪れたというわけである。


”仮面の女神”と名づけられたこの仮面土偶は、実は今から14年前の平成12年8月に茅野市湖東にある中ッ原(なかっぱら)遺跡から出土したのだという。

4・発掘時の状態
出土時の”仮面の女神”

作製年代は縄文時代後期の前半(約4000年前)で、全長34センチ、重量2・7キロの仮面土偶と呼ばれるタイプの大型土偶である。

5・仮面の女神
国宝 ”仮面の女神”

発掘時の様子が館内写真に掲示されていたが、ほぼ完全な形で出土しており、当寺から国宝級との呼び声が高かったという。


そして、道路上に幟が立っていたのはこの3月の「“仮面の女神”は国宝指定が妥当」との文化審議会の答申を受けて、縄文のビーナスにつづく二つ目の国宝指定が待たれる茅野市が縄文遺跡の町をアピールする“町おこし”の一環としての企画であったと知った。


その記念すべき国宝指定がわれわれが訪ねたわずか2日後になされたことをこのブログアップの時に知って、喜びも一入(ひとしお)であった。


さて、“仮面の女神”に先立つ”縄文のビーナス”は、1986年9月に八ヶ岳山麓の茅野市米沢に位置する棚畑遺跡から完全な状態で発掘されている。

6・縄文のビーナス・発掘時の状態
国宝 ”縄文のビーナス”の発掘時写真

その後、1995年に国宝指定を受けた全長27センチ、重量2・14キロの大型土偶である

7・縄文のビーナス
国宝 ”縄文のビーナス”

その姿はお腹とお尻が大きく張り出した妊娠した女性である。それは生命に対する礼賛の心をストレートに表わしており、おおらかな縄文人の生きざまを見るようでもある。


この縄文のビーナスや仮面の女神などが展示されている尖石縄文考古館の付近一帯は縄文時代中期(今から4〜5千年前)の住居跡がこれまでに219ヶ所も発見されるなど縄文遺跡の宝庫となっている。

8・尖石遺跡説明図
尖石遺跡説明図

縄文考古館に隣接した北側に”与助尾根遺跡”が位置する。

9・与助尾根遺跡・竪穴式住居
与助尾根遺跡

ここには縄文時代の竪穴住居跡が39か所発見されており、現在、6棟の竪穴住居が復元されている。

10・与助尾根遺跡
復元された竪穴住居

また道路を挟んで考古館の南側には、”尖石(とがりいし)遺跡”が位置する。

11・広々とした尖石遺跡
開放感一杯の尖石遺跡

広々とした草地に昭和29年に三笠宮殿下が調査された33号住居址が遠い縄文の時代の悠揚とした営みを語りかけているようで、何とも心持ちが豊かになってくる。

12・尖石遺跡・33号住居址
尖石遺跡・33号住居址

そして、尖石遺跡の名前の由来となった“尖石(とがりいし)”がその遺跡群の原っぱの南端を少し下ったところに5千年を経た今もそのままの姿で鎮座する。

13・縄文人の人影・尖石遺跡
尖石遺跡に縄文人が顕れる

その先端の尖った自然石は地中の深さは不明であり、地上に顕れた個所で高さ1m、根元の幅が1・1mという大きさであるが、古くから村人の信仰の対象となっており、いつの頃か傍らに石の祠が祀られている。

14・信仰の対象”尖石”
尖石・右手階段を下りて来る

尖石の右肩の窪みは縄文時代の磨製石斧を製作した際に共同砥石として利用されたとも、また、地上に突出した尖石が祭祀の対象となっていたとの見方もあるという。


そんな一大縄文遺跡の中心地に展示された“仮面の女神”であるが、国宝指定を機に、当館での実物展示は、仮面の女神が11月12日(水曜日)までだというのだ。“縄文のビーナス”は残念ながら10月2日で終了している。

15・縄文のビーナスと仮面の女神
国宝の実物二つのそろい踏み写真

ここでは幸いにも心置きなく撮影できた“仮面の女神”の乱れ撮りを記録のためにいくつか掲載しておくこととしたい。

仮面の土偶の拡大写真。

16・仮面の女神・拡大

仮面の接近撮影。

17・仮面の女神・仮面

斜め正面から。

18・仮面の女神斜め正面から

側面から。

19・仮面の女神・側面より

後方から。

20・仮面の女神・後方より

頭部斜め後から。

21・頭部斜め後ろから

こうしてディテールにまでこだわった作者のことを考えると、そして“仮面の女神”が気の遠くなるような4000年前にこの茅野の地で製作されたのだと思うと、人間の持つ無限の可能性を無条件に信じたくなるとともに、現代人は果たして技術的に進歩していると云えるのだろうか、心をふくめ豊かさとはいったい何なのだろうかという思いにどうしても駆られてきてしまうのである。


何はともあれ11月12日以降はレプリカ展示となる。“実物”をじっくりと写真に収めたい考古オタクは今からでも遅くない、茅野市の尖石縄文考古館へと急ぎ、足を運ぼう。

22・館内
尖石縄文考古館館内

そして、やはり、何といっても実物の持つパワーは違う。生命力あふれる縄文人の放つパワーは半端ではない。


尖石縄文考古館ではこの10月11(土)、12日(日)の連休に茅野市5000年 尖石縄文まつりが開催される。


それを目当てにご家族で、縄文時代のパワースポット巡りをされてみてはいかがであろうか。