湖東三山(西明寺・金剛輪寺・百済寺)の秘仏一挙公開を廻った=西明寺
湖東三山(西明寺・金剛輪寺・百済寺)の秘仏一挙公開を廻った=百済寺
西明寺のそんなしっとりとした気分を乗り越えて、次に聖観世音菩薩をご本尊とする金剛輪寺(こんごうりんじ)へ向かった。新緑がすばらしい。
金剛輪寺は奈良時代・天平13年(741)に聖武天皇の勅願により行基が開山した。
黒門(惣門)から本堂までまことに味わい深い石段が続いている。
苔生した石垣の真ん中に自然の石を敷いた参道がつづく。風のそよぎにつれ石畳に緑の影がゆらゆらと映える。
そよ風も山気も石畳も碧色一色に染め上げられたような新緑の隧道をくぐって本堂へ向かう。緑陰とはこれを言うかという涼やかな道である。
参道の途中からは庶民の祈りをつなぐように千体地蔵が参道の両脇にずらりとならぶ。一歩、足を進めるにつれ粛然とした心境になってゆく。
やがて、石段の上に室町時代に建立された重要文化財の二天門が見えてくる。
二天門をくぐるとそこに本堂がある。鎌倉時代に建立されたどっしりとした本堂である。国宝に指定されている。
堂内に安置されるご本尊・聖観世音菩薩から衆生を救うべく導きの紐が外界へと伸びている。
われわれ衆生がこの紐を握ることで菩薩と結ばれるのだという。早速、われわれ夫婦もその紐を握り、家内安全・家族の健康を祈った。
そして、本堂の横から堂内に入る。ご本尊の正面に坐る。
秘仏の観音さまをひたすら拝む。
このご本尊については次の言い伝えが残されている。
行基菩薩が一刀三礼で観音さまを彫り進めたところ、木肌から一筋の血が流れ落ちた。この時、魂が宿ったとして粗彫りのまま本尊としてお祀りしたというのである。
その故、この聖観世音菩薩は「生身(なまみ)の観音」と呼ばれるようになったと伝えられている。
薄暗い堂内から初夏の日差しが眩い外へ出て、頭上に広がる新緑を見上げた。
その先に新緑の葉叢に埋まるようにして建つ三重塔が見えた。とても爽やかで素直に美しい光景である。
そして、最後にうしろを振り向くと目にも眩い新緑に透けて、観音さまを守る本堂がひっそりと鎮まっていた。