東山区八坂鳥居前南入る ☎ 075−551−1511
八坂神社へお参りしたついでに、家内がちりめん山椒の“やよい”でちょっと買い物したいというので、南楼門を抜けて料亭旅館“畑中”やイタリアンの名店“キメラ”の前を過ぎ、一路、“やよい”へ向かった。
その“やよい”の3軒手前あたりに何故だか若い女の子たちがたむろしていた。
そして、店内に置かれた縁台で冷茶をいただき、八坂神社、円山公園の散策で渇いた喉を潤し、外へ出る。
先ほどの女性たちの姿は消えていたが、その前へ来ると、路上にメニュー台があった。
二人で覗き込むと、要はスィーツ処である。ビルのなかに石敷きの細い通路が続いているのが見える。
その入り口には浅葱色の“京洋菓子司 ジュヴァンセル”との暖簾がかかっていた。
メニューを覗き込んでいる間にも、若い女の子が横をすり抜け薄暗い細道へ入ってゆく。
二人して“うん?” “先ほどの女性軍はこの中へ入り込んだってこと?” 目を合わせると暗黙の了解である。われわれも勇躍、細道へ跳び込んだ。
突当りエレベーターにジュヴァンセルの案内が貼ってある。
二階でドアーが開くと、“ジュヴァンセル”の店内といってよい。女の子たちのお喋りが聴こえて来る。
店内奥にテーブル席があったが、若い子たちばかりなので、気恥ずかしくてすぐ目をそらし、ショーケースを覗き込む。
どうも、老夫婦が来るには、少々照れくさいお店である。そこで、ここの評判の菓子であるという“竹取物語”を購入した。
家内が精算している間にも若い子たちが入店、順番待ちをするといった状況。
いやはや、開店後、まだ13分しか経っていないのにこの盛況である。京都の女の子に人気のお店であることは確からしい。
帰京後、箱に入った竹取物語を取り出す。
竹の皮に包まれているケーキである。名前の由縁であろう。
竹の皮をむくと大粒の和栗やつやつやした黒豆が“これでもか”といった体でトッピングされているケーキが出現。
早速に、切り分けた竹取物語がお皿に載せられてきた。
口に放り込むとふくよかな和栗の味と黒豆の甘さにほんのりとラム酒の香が混ざって、なかなか上質の味に仕上がっている。
これは、今後も京都の土産に使えると、まずは自分の食欲を満たすために、“オイシイ”、“オイシイ”と、二切れ目についフォークを伸ばしてしまったわたしであった。
そして、“ジュヴァンセル”が京都の女の子に人気があったのは、購入した竹取物語がお目当てではなく、“祇園フォンデュ”という代物だということが後でわかった。
季節のフルーツやお団子、パウンドケーキをとろりとろけた抹茶チョコレートソースにつけていただく人気メニューなのだそうだ。
そして、つけ終わって残った抹茶チョコレートにはホットミルクを注いでくれるそうで、チョコレートソースを少し残しておくのが、この祇園フォンデュを食べる時の極意なんだとか。なるほど今どきの女の子たちの情報網は怖るべしと感じた次第である。