信州の鎌倉 その1=塩田平
信州の鎌倉 その2=北向観音堂
信州の鎌倉 その3=安楽寺
信州の鎌倉 その4=常楽寺
信州の鎌倉 その5=独鈷山・前山寺

上田市前山1721番地

塩野神社前より独鈷山
独鈷山


中禅寺は独鈷山(標高1266m)の北側の山裾(同600m)に位置し、先述した前山寺の末寺となっている。


中禅寺の拝観時間は午後4時まで。われわれが到着したのは4時を20分ほど過ぎた頃。本堂は閉まっていたので、御朱印をもらうことはかなわなかった。


25 中禅寺・本堂

しかし、境内には自由に足を踏み入れることができた。ご近所の方が夕刻の散歩に来られていたので、観光寺院とは異なり、近在の人々の日常生活のなかに融け込んだ、共に長い時を刻んできた純朴な“お寺”なのだろ
う。

中禅寺・標石

本堂入口の左手に、これまた質朴簡素な仁王門がある。門の両脇に金剛力士像が睨みを利かせていなければ、田舎の普通に古い家の手入れをしていない門のように見える。

中禅寺・仁王門
仁王門

ただ、最近の研究調査によって、二体の金剛力士像は平安末期の制作のものと判明し、日本で5番目に古い仁王像なのだという。


吽形・金剛力士像(左) 阿形・金剛力士像(右)
左:吽形の金剛力士像        右:阿形の金剛力士像

そんな貴重な仁王像だが、あまりにも素っ気なく置かれているので、どうもありがたみに欠ける。それはまことに失礼というものだろうと、今は深く反省している。

中禅寺・薬師堂斜め方向から

その仁王さまを横に見て、仁王門をくぐった正面に、重文に指定される薬師堂がある。

この薬師堂は平安末期から鎌倉初期に建立されたものである。藤原時代に数多く造営された「方三間の阿弥陀堂形式」という建築様式で、平泉の中尊寺金色堂などが有名だが、中部日本では最古の木造建築物とされている。


中禅寺・薬師堂正面より
薬師堂正面

屋根は茅葺きで、方三間の宝形造である。四囲のどちらから見ても柱が四本立ち、その柱と柱の間(けん)が三つある正四角形の建物である。


薬師堂真横から
薬師堂真横より

正面三間と側面第一間には、両開きの板扉が設けられている。また、背面には引き戸の入口が一つ存する。


散策の人もいなくなった境内に建つ薬師堂は、鎌倉という時代が語りかけてくれているようで、まことに端正で質実剛健な佇まいを見せていた。