細川奈津子リサイタル
細川奈津子ヴァイオリンリサイタル・パンフレット表紙

奈津ちゃんに初めて会ったのは約3年前の2009826日である。山中恵介氏(ピアニスト山中和子氏の御主人)の信州黒姫のお宅での恒例のホームコンサートの場であった。


2009年のホームコンサートでの細川奈津子さん
2009年8月の信州黒姫のホームコンサートでの奈津ちゃん

当時、ウィーン国立音楽大学に留学中の奈津ちゃんが夏休みで地元である黒姫に帰郷しており、山中和子氏の誘いで、ホームコンサートに顔を出してくれたのである。


その時は、“タイスの瞑想曲”や浅田真央ちゃんのスケーティング曲であまりにも有名となった“チャルダッシュ”が聴けてうれしかったのと同時に、まだ愛らしい女の子、学生さんという印象を受けたものである。


そして昨年の8月、4年間留学していたウィーン国立音楽大学の第二ディプロマを最高位の成績で取得し帰国したばかりの奈津ちゃんに、また黒姫のホームコンサートで会うこととなった。


黒姫ホームコンサートでの細川奈津子氏
2011年8月の黒姫での圧巻のチゴイネルワイゼン

その夜、彼女の激情的なチゴイネルワイゼンを聴いた時、ほんの二年前、ここに立っていたあの愛らしい女の子とはまったく別人の、ひとりの音楽家がわたしの目の前で演奏してくれていると震えるような感動を味わったのである。まさに、夏の夜の夢を見せてくれた奈津ちゃんであった。


ディナー会場での即興演奏
黒姫ではディナー後にこうして自由な演奏をやってくれるのが楽しみ・・・

それから約1年。今回は東京の代々木上原の“MUSICASA(ムジカーザ)”(渋谷区西原3丁目33)で、“細川奈津子ヴァイオリンリサイタル”が開催された。こじんまりとしたホールであるが、音楽をこよなく愛する人々が集うのには格好の肩の凝らぬお洒落な空間である。


代々木上原・ムジカーザ
”MUSICASA(ムジカーサ・音楽の家の意)”

演目は以下の通りであった。


当夜の演目
当夜の演目

モーツアルトとブラームスの曲目が終ったところで、休憩となった。その20分間の休憩時間に聴衆には簡単なオードブルとワインが供される。以前の山中和子さん(今回のピアノ伴奏)のコンサートでもワインがふるまわれたが、この形式はクラシックが肩肘張った小難しい教養といったものをひけらかす小道具などではなく、人間の日常生活の潤いのためにあることを改めて認識させるもので、素晴らしいアイデアであると前回、感心したところであった。


ワインお変わり自由
個々人がワインをカウンターに取りにゆきます
休憩時間にワインとオードブル
写真を撮るため、ちょっと椅子の上に置きました。もちろん、立って歓談しながら呑むんですよ

その愉しい休憩時間をおいしいワイン(二杯もお代わりしてしまったなぁ・・・)と、仲間との楽しい語らいで過ごし、リサイタルは後半の部へと入っていった。


ムジカーザ
こじんまりした空間です。私の席から撮りました

そして最初のクライスラーの小品“前奏曲とアレグロ”で、わたしはまたまた奈津ちゃん、いや、もう細川奈津子氏と呼ばねばならぬ、成長著しい音楽家の勢いというものを感じ、また感動したのである。


細川奈津子・山中和子略歴
細川奈津子・山中和子氏のプロフィール

クライスラーの曲もそうだが、最後の曲となったラフマニノフの“二つのサロン風小品作品6”においても、あの童女のような愛らしい顔とは正反対の内面に蔵する迸る情感を見事に空間に解き放つ見事な演奏であった。


細川奈津子さん
終演後に出口でお客様を笑顔で送ってくれました

内面に秘する激情を弾きこなす細川奈津子、今後のさらなる成長が楽しみである。