伊那市高遠町西高遠1662

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満留恵
高遠饅頭・満留恵

高遠城址は桜の名所としてつとに有名であるが、もうひとつ、甘党の人間にとって忘れてならぬのが、こし餡のたっぷり入った“高遠まん頭”である。

高遠饅頭
文青堂製造の高遠饅頭

たかが饅頭などと言うなかれ。

薄皮にこのこし餡の多さ
こんなに餡がいっぱい・・・、うれしいね!

“高遠まん頭”は安土桃山時代から当地に伝わってきた高遠城主御用達の由緒ある御用菓子なのである。その昔は小豆と小麦粉で作った“おやき”が起源なのだそうだが、今では“おやき”はそれなり、“高遠まん頭”はそれなりに上品な御菓子として分化している。参勤交代の時には時の将軍に献上されたといわれるほどの極上品である。うん?・・・なんで、こんなにわたしが盛り上がらなきゃいけないんだ? 饅頭のことで・・・


いやいや、たかが饅頭、されど饅頭なのだから、しようがない。だって大好きだからしようがないんだよね。  

高遠ご城下通り
高遠のご城下通り

そこで、その“高遠まん頭”だが、製造元兼販売としては「文青堂」「あかはね」「老舗亀まん」「千登勢」「大西屋」さんなどが有名なんだそうだが、その日はちょうどご城下通り商店街が定休日の日に当り、わずかに開店していた“満留恵(まるえ)”という私設美術館「不折館」を併設するお洒落な感じの和菓子屋さんでその御用菓子を購入することになった次第。

明治8年創業の饅頭屋・亀まん
饅頭の老舗・亀まん
高遠まん頭・あかはね
ここも高遠饅頭で有名な”あかはね”

ところがそれが実に大正解だったのだから、世の中、何が幸いするのか分からぬという言葉をそれこそ実体験したのだから、やはり、饅頭はイイ!!

満留恵の店内
プチ・ギャラリーのような店内

というのは、そこのご主人である伊藤美奈子さんが高遠饅頭のおいしい食べ方をご教授下さったのである。“満留恵(まるえ)”は文青堂製造の饅頭を販売しているのだが、伊藤さんのお宅ではよく、高遠饅頭を大葉で包み、揚げて食べるのだと教えてくれたのだ。

大葉包みの揚げ饅頭
大葉で包み揚げた高遠饅頭

あげまんじゅうと訊くと思い浮かぶのが、浅草仲店通りにある“九重”のあげまんじゅうだが、大葉で包むというのがちょっと新鮮で、興味がわいた。

高遠饅頭を半分に切ります
次に半分になった饅頭を大葉でくるみます
くるんだ高遠饅頭を溶かした薄力粉につけます
天ぷらの衣がつきます
ジュ〜ッと揚げます
揚げ饅頭の出来上がりです!

そこで、作り方といってもそう大したことではないようなのだが、何せ作っていただくのは家内であるからして、当然、家内によくそのレシピを覚えてもらわねばならぬ。


帰宅後、作る手順を横で撮らせてもらったが、「うん、さすが手際はよいね」などと、一応、礼儀を尽くしたのちに、いただくことになった。


青紫蘇の香りが油のにおいを爽やかにさせ、こし餡が口内に広がった時、餡の味がまろやかになっていて、ほっこりとした幸せ感が充溢するのには、正直、驚いた。単純に高遠饅頭を食べるのもそれはそれで上品でおいしいのだが、この高遠揚げ饅頭は、饅頭の“通”としては是非、トライしておくべき新たな味覚である。

大葉とこし餡のコラボ揚げ
大葉とこし餡のコラボ揚げ

世の甘党の諸君、“大葉包み高遠揚げ饅頭”をご賞味あれ。この写真でよく分からぬ場合は、“満留恵”のご主人、やさしい美奈子さんに訊かれるとよい。


そして次に高遠を訪ねる際には、揚げ饅頭の報告をしに“満留恵”に寄り、“不折館”を覗かしてもらおうと思っている。


先日は浅学にして高遠の生んだ洋画家であり、書家である中村不折(ふせつ)のことを知ることもなく、店内に掛かる不折独特の書をじっくりと見ることもしなかった。

店内に掛る中村不折の書
明治・大正・昭和にかけ活躍した中村不折の書

“高遠饅頭”や“おたふく豆”にだけ目を奪われ、その購入に余念がない、ただ食い気だけの無粋を窮めたことを実に恥ずかしく思う。

空豆を甘く煮たおたふく豆
おたふく豆も上品な甘さで逸品です

だけど・・・、大きな空豆を上品な甘さで煮たあの“おたふく豆”(写真を撮るのを失念した)のおいしさは、やはり、教養などをずっと上回る魅力であったことは、本当のところ今も変わっていないことも、情けないながら事実である・・・


まぁ、次回はそう肩肘張らずに、「吾輩は猫である」の挿絵画家でもあり、新宿“中村屋”のロゴ文字を書いた書家である中村不折の作品にも触れる知性も兼ね備えた小さな旅にしたいと、考えているところである。

満留恵近くのご城下通りに建つ”不折”揮毫の碑

あぁ、そうそう、諏訪の清酒“真澄”の文字も不折の書になるそうだ。いやいや、お世話になっているのに、この不義理。反省! 反省!