鳩山首相に告ぐ=沖縄訪問のあまりの軽さ(2010.5.5)
「辺野古以外があるか。私は決してないとは思っていない」そんなら鳩山、口先じゃなく、汗かけよ!(2011.12.5)
普天間基地移設問題に見る民主党政治の不実と大罪(2011.12.5)

戦後、これほどまでに“誠実”、“真摯”という言葉と対極にある“政(まつりごと)”を行なった政党はないのではないか。また“誠実”、“真摯”という日本語そのものを死語化する反省なき“政”を首尾一貫してやり続けてゆく政党を見るのも初めてである。


午前4時過ぎというとんでもない時間に、沖縄防衛局は環境影響評価(アセスメント)の評価書が入った段ボール箱16個を沖縄県庁に運び込んだ。それは普天間飛行場を名護市辺野古に移設するにあたっての行政手続きの一環である。

“環境アセス提出”という行政手続きをこの尋常ならざる時間に、しかも泥棒猫が入り込むようなやり口で行なった民主党政府にもはや沖縄問題を語る資格、正当性はない。

御用納め前日の27日に、こともあろうに配送業者を使った評価書の県庁内搬入を試み阻止されるという呆れ果てた行為そのものが、普天間基地移設に対する同党の沖縄県民を愚弄する姿勢を如実に物語っている。

鳩山元首相の“最低でも県外”コールから迷走した基地移転問題に対し、民主党は「地元に誠意をもって」とか「沖縄県民の意向に配慮し」などと口先で空疎に繰り返すのみで、正面からこの難題に取り組む姿勢を一度たりとも見せたことはなかった。

これまで首相をはじめ首相経験者、関係閣僚が地元にじっくり居座り、腹を割って沖縄県民とそれこそ真摯な態度で誠実に言葉を交わしたことが一度でもあるだろうか。まったくない。

今回の常軌を逸した愚行の動機は、御用納めとなる28日中に“環境アセス”を提出、つまり年内提出というアリバイを作るというその一点のみにあった。

 

野田佳彦首相は就任直後の米・オバマ大統領との初の電話協議(91日)で、普天間飛行場移設問題を最優先に解決するよう異例の要求をされた。それを受けた11月の日米首脳会談において、環境アセス評価書の年内提出を約束させられた「対米公約」を表明した。

いわば、普天間移設問題の迷走に業を煮やした米国の恫喝に押され、“もはや県外しかない”、“辺野古に戻ることはない”との仲井真弘多(ひろかず)知事はじめ沖縄県民の強い民意が見事なまでにシカトされた。国民の意思など糞喰らえで、米国の”具体的進展”という意向に阿(おもね)ったわけである。

そもそも仲井真知事は24日の時点で、政府が環境影響評価書を県に提出することにつき、「行政手続きなので、関連法令にのっとってやるしかない」と述べ、政府の評価書提出を容認する意向を表明していた。勝負はその後であると言っていたのである。

一方で、一川防衛大臣は12日の仲井真知事との会談後に、記者団に対し、「(評価書提出は)法手続きとしてあるが、一方的にやる問題とは違う」と述べていたのである。

然るに、普天間基地の危険性除去につき膝詰めで真剣に語り合わねばならぬ相手に、評価書は行政手続きだから受け取ると表明している相手に、住民票の申請書でも送りつけるように配送業者に委託、それが駄目となったらコソコソと卑劣な“未明の搬入”を敢行した民主党。もはや同党に沖縄問題を語る資格も正当性もない。

国政を担う覚悟とは、己が正しいと思うことは堂々とその信ずるところを国民に開陳し、たとえ総身が滅しようとも、最終的には国民の真の利益につながることであれば、どんな反対を押し切ってもやり遂げる、その裂帛(れっぱく)の気合を臍下丹田に秘することである。

裂帛の気合の欠片も見えぬ民主党は、日本の将来のためにも一刻も早く下野すべきである。国家を運営してゆく正当性は失われたのだと、引導を渡すしかないのである。