また鳩山由紀夫という男が政治不信を加速化させるあまりにも軽い厭きれた言葉を発した。
「国益に資する政治を行うために、皆様方のご期待をもらえるなら次の衆院選で行動をともにさせてほしい」
苫小牧市において後援会の会合での鳩山前首相の言葉である。もって回った言い方だが、要は「議員を辞めることは止める」ことにしたと言ったのである。
同氏はそもそも普天間移設問題の責任をとり首相辞任を表明した6月2日に、「次の衆院選には出馬しない。首相たる者、その影響力をその後、行使し過ぎてはいけない」と議員辞職につき表明していた。
その言葉が二転三転した普天間問題や日米関係の悪化に対する国民の大きな怒りをいくばくかやわらげる効果となったと言える。国民の責任追及の矛先を、政界引退、政治生命を断つという大きな決断でかわしたとも言えるのである。
ところが昨今の鳩山前首相は、小沢一郎前幹事長の政治倫理審査会への出席問題で、調整役のつもりかそれとも小沢前幹事長の同志としてなのか分からぬが、政治的動きを活発化させていた。
そして、「最低でも県外」で沖縄県民にとどまらず日本国民の信頼を完全に失っているはずの人間が、何を血迷ったのか冒頭の今回の発言である。
沖縄問題をここまでこじらせ、日米関係に少なからぬ亀裂を生じさせ、政治不信、外交弱体化を招来した責任を、この男はまったく感じていないのではないのか。最低でも県外とあれだけ熱く語っていたのに、首相を降りてからは一切沖縄に足を踏み入れてないのではないだろうか。政治家としての信念、発した言葉を実現させるため地道な努力を行うことが、この男には本質的に欠如しているとしか言えぬのである。
言葉を選ばずに評すれば、「性格欠陥者」あるいは「性格異常者」とも形容できる人間だと表現すべきなのかも知れない。
沖縄県民の心を弄ぶだけ弄び、国会で普天間問題紛糾を問い詰められた際に苦し紛れに腹案があると答弁した男が、一転、辺野古に移転と決めた。その変節のプロセスは一切公に説明されていないし、首相を辞めたことで十分責任は果たしたと考えているのだろう。
これだけ沖縄の基地問題に深い傷跡を残し、政権交代に対する国民の期待を裏切ってきたにも拘わらず、議員辞職を表明した後、衆議院任期の残された期間において普天間基地移転について汗をかいた気配はないし、普天間問題を語った形跡はない。
どこかの大学で講演に勤しんだり、他人事のように菅政権の外交能力に懸念を示したりと、沖縄県民の痛みにこれっぽちも胸を痛めぬその言動を見るにつけ、この鳩山という男は政治家という前にひとりの人間としてあまりに不誠実で卑怯この上ない人物であると言うしかないのである。
そんな男が「国益に資する政治を行う」といって、一旦政界引退という重い決断をしたはずが、簡単に前言を翻し政治家を続けるという。下品な言葉で恐縮だが、どの面下げて「国益」なんて言葉が吐けるというのか。この男のことを考えると胸糞が悪くなって、こっちまでが下品で卑劣な人間になってしまうようで、たまらない。
国益に資すると云うのであれば、まずは母親から長年贈与を受け、巨額の脱税を続けていたことを国民の前で白状し脱税の罪に服し刑務所に服役するのが、このあまりにも軽薄で卑怯な男がこの国にのためにできる唯一の事なのだと知るべきである。
「国益に資する政治」などとこの男だけには言ってもらいたくない。
国益に資すると言うのであれば、国民の前からさっさと姿を消し、今後、一切公の場に顔を出さないで欲しい。それが、この男が国益のためにできるたったひとつのことである。