711日の第22回参議院総選挙は、改選議席数121のうち、民主44、自民51、国民新党0で、民主・国民新党の連立与党が非改選議席の65を合わせても過半数(122)に遠く及ばない109議席と大敗の結果となった。

 

 大敗の要因として、前鳩山政権時の「政治とカネ」、迷走を繰り返した「普天間基地移設問題」、菅総理の選挙期間中の「唐突な消費税発言」と「税金還付のブレ」などが挙げられている。しかし、敗因の主たるものは、政権交代によって期待されたこれまでの自民党政治のあり方の一掃、つまり「清廉な政治」、「税金の無駄遣いの排除」、「誠実な国会運営」など「国民のための政治」が、この10カ月でことごとく裏切られたことが大きい。

 

昨夜、菅首相は記者会見において、消費税に言及したことを敗因の大きなものとして挙げたが、その認識も非常に甘い。ちゃんとした党内議論や積み上げ計算、税制全般にわたる整合性あるビジョン、使い道の詳細説明などがあっての消費税発言であれば、国民はソッポを向くことなどしない。それほど国民は無知でも偏屈でもない。納得できる説明さえあれば、十分、受け入れる心構えはあるのである。

 

 敗因分析はそれくらいにして、ここでは相変わらず改善を見ない「1票の格差」について述べたい。国民の法の下での平等をないがしろにしたままの国会のあり方を厳しく問いたい。

 

 神奈川選挙区(改選定員3)で民主党の現職閣僚(法務大臣)、千葉景子氏が696,739票を獲得したものの、48,404票差で同党の現職議員金子洋一氏(745,143票)に敗れ、落選した。

 

 この神奈川選挙区は、選挙直前の624日に総務省より発表された「選挙人名簿登録者数・在外選挙人名簿登録者数」を元に計算された「1票の格差」がもっとも大きい、つまり全国の選挙区のなかで有権者の1票が最も軽い選挙区であった。

 

 その時の時事通信社の報道によると、「1議席当たりの有権者数を選挙区ごとにみると、最大の神奈川県(2442672人)と最少の鳥取県(487893人)の開きは5.01倍となり、最高裁が格差是正を求めた前回選挙時の最大4.86倍(最大の神奈川県と最少の鳥取県との差)を上回った」とある。

 

 1票の重みが日本一である鳥取選挙区(改選定員1)では、158,445票を獲得した自民党新人の浜田和幸氏が当選を果たした。

 

 千葉法務大臣(落選後も民間人として大臣続投)は、浜田氏の4.4倍の有権者の支持を得たにも関わらず落選した。逆にいえば、神奈川の有権者は鳥取県の「4.4分の1」以上の票の軽さを強いられた。まさに法の下の平等を蔑(ないがし)ろにされたのである。

 

 折しも、昨年の930日、20077月参院選に対する最高裁大法廷判決は、「1票の格差」が最大で4.86倍(鳥取選挙区:神奈川選挙区)であったが、定数配分は合憲と判断したものの、「投票価値の平等の観点から大きな不平等があった」とし、格差縮小のために「選挙制度の仕組み自体の見直しが必要」と、選挙制度そのものの見直しに初めて言及した。一票の格差是正を怠る国会に対し、最高裁は、待ったなしの最後通牒を突きつけている。

 

 ねじれ国会の現出により、また政局は混迷を深めることが予想されるが、民主主義の基本である「一票の格差」是正は、原則中の原則である。党利党略を超え与野党一体となって、それこそ議員定数削減議論と合わせて、抜本的な選挙制度見直しを行なうべきである。これこそ、健全な民主主義を守るうえにおいて、大事な政治の責務であると考える。