174回通常国会が会期延長もせず当初予定の期日、616日の閉会を見た。これで、参議院選挙は624日公示、711日投開票という選挙日程が確定した。

 

 いま、この国には多くの難問が山積している。それも早急に手を打ち、対応策を講じなければならぬ問題ばかりである。

 

 リーマンショックからギリシャ危機、それに端を発した金融危機の影、赤字国債問題。哨戒艦沈没を因とする南北朝鮮の一触即発の軍事的緊張。対応が後手後手に回り、拡大を続ける口蹄疫被害。就職希望の4年生大学卒405千人のうち、2割に当たる81千人がこの春の就職先が決まらなかったという厳しい経済・雇用環境。沖縄の意向をないがしろにしたまま、復び、オバマ大統領と合意した普天間基地移転にかかる日米合意。

 

さらに国会審議においても、「障害者自立支援法等の一部を改正する法案」(撤回)、「労働者派遣法の一部改正法案」(閉会中審査)、「国家公務員法の一部を改正する法案」(未了)、「地球温暖化対策基本法案」(未了)、「地域主権改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律案」(閉会中審査)等々、民主党が重要案件とした法案での審議未了および閉会中審査が目白押しである。また、与野党で合意していたネット選挙解禁を目指す「公職選挙法の一部改正法案」に至っては、法案提出すら叶わぬ事態となった。

 

結果として、今国会の内閣提出の法案、いわゆる閣法の成立率は55.6%と戦後最低となった。

 

こうした事態は、ひとえに内閣支持率がV字回復しているうちに、参議院選挙に持ち込みたいという民主党の「党利優先」の姿勢が招来したものであることは言を俟たない。

 

組閣に5日間をかけた菅内閣。しかし、国民生活にとって重要な法案審議を少しでも進めるための国会会期延長はまったく行なわず、新内閣発足にも関わらず1日も予算委員会を開かないまま閉会という、国会軽視いや国会無視とも言える異常な通常国会であった。

 

菅首相は15日の参議院本会議での各党の代表質問に対し、野党が求める衆院解散・総選挙に関して「参院選も国政選挙だ。まず参院選で民意を聴くのが筋だ」と述べた。

 

所信表明で信を問う材料は国民の前に提出していると、嘯(うそぶく)く菅新首相。「参院選で民意を聴くのが筋」と言うのであれば、最低、1週間でも国会会期を延長し、自らが唱えた「第三の道」を歩むための具体的政策を国民の前で語るべきである。

 

「強い経済。強い財政。強い社会保障」を「一体として実現してゆく」のは、もちろん結構なことだし、早くそうすべきだと私も思う。しかし、それは一つ一つが相矛盾する政策課題であることも事実である。だからこそ、そうありたいと願って、これまでそれが成就せずに来たのである。

 

 それを一体として実現すると言うのであれば、国民の前にまずは具体的な政策、ものの考え方、道筋といったものをちゃんと提示すべきである。

 

 それなくして、あの所信表明だけで「民意を問う」というのは、国民を馬鹿にするにも程があると、一蹴せざるを得ない。

 

 国民生活を後回しにした選挙ありきの民主党。よくもまぁ、「最小不幸の社会を作る」などと抜け抜けと言えたものである。