最近の民主党の遣り口には、率直に疑問を呈せざるを得ない。それもこれまで同党が自民党政治揶揄してきた政治の透明性という問題だけでなく、悪質性の高い隠蔽の気配なり、嘘で誤魔化そうといった国民に対する不誠実な態度が目につくのである。

 

 「中小企業等金融円滑化法案」(返済猶予法案)が衆議院財務金融委員会で審議入りしたのは18日である。その翌日の19日には、同委員会で自民・公明両党欠席のまま採決が強行された。それにつづく20日未明の衆議院本会議でも、自民・公明党などが退席するなか強行採決が行なわれた。

 

 審議日数がたった一日の強行採決にはさすがに呆れたが、その採決を強行したことについて民主党の国対委員長が「何といわれても、国民生活を守ることが大事」と語り、鳩山由紀夫総理が「強行採決というより、審議拒否だ。審議拒否みたいなこと、お互いにやるべきではない」と答えるにいたっては、もう何をか況やである。こんなやり方で国民の生活を守ってくれと、われわれは民主党に頼んだ覚えはないし、一見、誠実に見える鳩山総理の口からこんな詭弁が飛び出すなど思ってもみなかった。

 

 野党時代の言動と較べて、今回の強行採決という国会運営は呆れ返るものの、官房機密費についての平野博文官房長官の説明は、国民に嘘にも等しい不誠実で稚拙対応を行なったという意味で、悪質性高いと言わざるを得ない

 

 平野官房長官は政権発足直後の917日の記者会見では機密費について「そんなものあるんですか。全く承知していないからコメントできない」と語ったが、1ヵ月半後の115日の会見では、政権発足前後に河村建夫前官房長官から引き継ぎを受けていたことを認めた。

 

このことを好意的に見れば、野党時代の2001年に機密費支払記録作成や公表の義務化を謳った「機密費改革法案」を提出したことやその後も使途の公表を迫っていたことなどとの整合性に苦慮したことは想像に難くない。

 

しかし政権の座につくや否や「そんなものあるんですか」では、これまで同党が言ってきた透明性の高い政治とは真逆の言動であると断じざるを得ないのである。機密費に関する一連の官房長の発言は「おとぼけ」という表現ですます話とは自ずから性質が異なるというものだ。

 

国益に反するものを公開する必要のないことは、われわれでも分かる。だから正直に最初から「野党時代の機密費公開という主張は言い過ぎであった。政権を取ってみて分かった部分は大きい。国益に関する機密性が高いものについては、公開等透明性の確保については「機密費改革法案」の精神を生かしつつ、国益の担保を前提に然るべく対応する」と言えばよかったのだ。「そんなものあるんですか」は、腐った政権党の辞書にしか掲載されていない言葉であることを、平野官房長官は知るべきである。

 

 さて、政権を民主党へ、二大政党政治を選択したいとするのは、小沢一郎民主党幹事長でも、鳩山由紀夫総理の思いでもない。ほかならぬ国民がそうあって欲しいと願ったから、その一歩として政権交代が実現できたのである。しか、それはあくまでも民意を反映する透明性の高い政治を国民が期待してのことであることを民主党は忘れてはならない

 

 然るに、今、われわれが目にしている国会の状態は、自民党政権時代と何ら変わることのない光景である。野党時代から強行採決は国会軽視だと憤慨し、数による暴挙は許せぬと拳を振り上げていた政党が与党になった途端、全く同じ行動をとったさらに、来週には各委員会で短時日の審議を行い、すべての法案を一斉に通すと息巻いているという。これは、判然言って、国民に対する裏切り行為である。いやそれ以上に、声高に自民党の政治手法を非難してきた分だけ、一層、罪は重いと言わざるを得ない。攻守処を替えた山岡国対委員長が強行採決という国会運営について「国民生活を守ることが大事」と嘯(うそぶ)いたなどは、笑止千万と言うものである。

 

 さらに、小沢幹事長、鳩山総理にかけられ政治献金疑惑に絡、この強引な国会審議日程のごり押しがあるのだと言われるのも、実際に疑惑隠しと言われても致し方ないところである。

 

 政府・与党の実質的なNO1の人物に対する献金疑惑である。あらぬ嫌疑であるというのなら、堂々と国会の場、国民の目の前で説明すればよい。現在の審議時間もないような国会運営では、疑惑の目が向けられていることを何とか糊塗しようとしているとしか見えぬのは、「普通の国民」の「普通の感想」である。

 

 また、鳩山総理の、日々その傾向は強まっているようだが、暖簾に腕押し的な態度が気になる。総理のそうした言動が、国民が期待した透明で分かりやすい政治とは対極にあるものだからである。支持率が低迷を続けたかつての自民党政治のと変わらぬのである。そして、それ以上に革新を期待した分だけ、その失望感と怒りは限りなく大きなものとなってゆく。

 

 このままでは、国民の期待する自民党政治の大掃除は出来ず仕舞いで、尻切れトンボのままこの政権交代劇は水泡に帰してしまう。もう一度、民主党は目覚めて欲しい。国民目線の政治への回帰を・・・。