民主党の行政刷新会議による来年度予算の「事業仕分け」が、連日、公開の場で、熱っぽくというよりずいぶんと乱暴なやり方で進められている。

 

そのなかで、13日には、独立行政法人の理化学研究所が行っている次世代スーパーコンピューター(概算要求額約270億円)の開発について、蓮舫民主党参院議員らが「財政難のなかで大金をかけて世界一の性能にこだわる必要性があるのか」、「一番だから良いわけではない」などと指摘、事実上のNOが突きつけられた。

 

理化学研究所理事長でノーベル化学賞受賞者の野依(のより)良治氏は「(スパコンなしで)科学技術創造立国はありえない」と憤慨しておられるというが、まことにもっともな怒りである。

 

民主党は技術の何たるか、技術立国の意味の重さがわかった上での判断であるのか、正直、同党の目指す国家ビジョンに対して大きな不安を覚えざるを得ない。

 

刷新会議のメンバーは、一部の国内コンピューターメーカーがこの共同プロジェクトから脱けたことなどから、プロジェクトの採算性がない、費用がかかり過ぎるといった理由からNOを突きつけた。

 

今、その礎を築かねばならぬプロジェクトについては、国家百年の大計のため、民間ではリスクが大き過ぎるからこそ国家が主導的立場で行うのではないのか。民間で採算がとれないからこそ、国が行うのである。

 

行政刷新会議は税金の無駄遣いをトコトンなくすのだと、意気込んでいるのは分かるし、それをやってもらわねば政権交代の意義の大きな部分はなくなる。しかし、ただ、予算をぶった切ればいいというものでないことも、当然のことだとわかっているはずである。

 

不必要な支出、無駄をなくして、必要な分野へは投資を行なう。そのメリハリがついてこその「事業仕分け」のはずである。スパコンの開発をストップするのなら、なぜ、多すぎる国会議員の数を真っ先に削減しないのか。どう考えてもやるべきことは他にまだまだあるはずだ。

 

こんな「削減ありき」の魔女狩りのような光景を見せつけられると、現政府は、本気で、この国の未来の発展・繁栄を保証し、若者たちが世界で活躍する舞台を用意してあげるつもりなのだろうかと不安に駆られてしまう。

 

スパコン開発に「駄目だし」するなどという暴挙は、自ら日本の未来への夢を切って捨てるようなものであり、未来を背負う若者の夢を奪い去るものであると言わざるを得ない。

 

民主党はマニフェストの詳細版である「政策集INDEX2009」のなかで「科学技術人材の育成強化」の項目において「研究者奨励金制度を創設するとともに、国内の優れた研究プロジェクトへの支援を強化します。また、研究者ビザの拡充など優れた外国人研究者がわが国に集まる環境をつくります」と言っている。

 

しかし、次世代スパコンの開発は、「国内の優れた研究プロジェクト」ではないと事業仕分けは断定した。そして、こんな貧相で劣悪な研究環境を作ることが、「優れた外国人研究者がわが国に集まる環境をつくります」ということだとすれば、それは狂気の沙汰と言うしかないし、そう思っていないのであれば、民主党は視野狭窄の幼児性の脳みそを持った集団であると、残念だが断じるしかない。

 

野依(のより)良治博士ではないが、怒りで震えが止まらぬような気分を久々に味わった夜である。