御射鹿池(みしゃかいけ)−−−蓼科散策

湖面と森の新緑のシンメトリー

御射鹿池---紅葉の候

御射鹿池---2009年盛夏の候

2010年、御射鹿(みしゃか)池の紅葉、見頃は10月23日

 

 

御射鹿池1

御射鹿池2

御射鹿池4

 

 

 

 汀に白樺の樹が       湖面に新緑の山容   堤にクローバーも

 東京国立近代美術館で3月29日から5月18日まで開催された「生誕100年 東山魁夷展」で、森と白馬と湖という構図の幻想的な名画を直接、この目で観た。そのときこのような風景が実際にこの世界に存在するのだろうかといたくこの「緑響く」というタイトルに興味をそそられた。

 そしてこの風景のモデルが奥蓼科にある御射鹿池という小さな湖であることをそのとき知った。

 御射鹿池はビーナス街道と大門街道の交差点である芹ガ沢から奥蓼科温泉に向かう湯みち街道(県道191号線)沿いの標高1528mの高処にある。その県道をもう少し行った突き当りが奥蓼科温泉郷のひとつ、渋の湯温泉である。

 湖畔に立てられた説明板によれば、「みしゃかいけ」とも「みさかいけ」とも呼ばれる御射鹿池は、昭和8年、人工的に造られた湖水面積1.3ha、水深8mの農業用温水ため池であるとのこと。人造湖といいながらすでに75年という時間が経過しており、周囲の自然と一体となった風景は本当に素晴らしいのひと言である。

 われわれ夫婦がたどり着いたとき、三脚を抱えたひと組のご夫婦がいるのみであった。車を止めて軽く会釈をすると、もう充分にこの美しさを堪能されたのか、われわれに「静寂」という「時間」を譲ってくれた。

御射鹿池6

御射鹿池7

御射鹿池8

 

 

 

  静寂         鏡のような湖面        湖面をわたる微風

 時折聴こえる鳥の啼き声が、逆に、絶対的な「無言(しじま)」を感得させる。そしてそよ風にわずかに乱れる透明な湖面に新緑が鮮やかに映る。その美しさに魅了され、夢の世界へといざなわれたわたしは、水底まで見通せる湖面から新緑の命の息吹がまるで匂い立ってくるように感じられたのである。

「緑響く・・・」、そう、新緑の匂いがまるでわたしの全身を打ってくるように思えたのである。

流れ出す湖水

御射鹿池5

清澄な湖水

 

 

 

 湖からは清らかな疏水が実りを生むべく勢いよく流れ出ていた。その「動」に触れることで、わたしはようやくこの一幅の絵画が現実の風景であることを知った。

 そして御射鹿池が醸し出す雰囲気は何度も足を運び、そこに身を横たえたくなる「日本の精神世界」、「日本の心」を感じさせてくれる場所であると確信した。

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