割烹やました(後編)――「BAR K6」
「K6」京都市中京区木屋町二条東入るヴァルズビル2F
電話:075−255−5009
「やました後編」と銘打ったのは、「やました」で旬の料理に舌鼓を打った後に行ける粋なお店を紹介したかったからである。前編で記した大将から紹介された大将らもたまに顔を出すと云うお店である。
K6への外階段 オレンジ色の店内 大人のムード
「やました」から木屋町通りを北へ2分ほど歩き二条通りに突き当たったところのヴァルズビル二階にBar「K6」はある。ホテルフジタの西隣になる。外階段を昇り薄暗い店内に入ると、カウンターとオレンジ色の照明に浮き上がった棚に色とりどりのボトルが列んでいるのが目に入る。淡くオレンジ色のベールをかけたような大人の雰囲気に満ちた小洒落た店である。入った瞬間の印象は「グ~!」であり、「大将もやるじゃ〜ん!」であった。
マスターの坪倉さんに名前を告げると、カウンターに二つ席が用意されていた。ちゃんと予約の電話が入っていた。ちょっとしたことで気分はさらに「グー!」になる。カウンターには二組ほどの先客がいたが、常連さんであろう。静かに語り合う姿はお店の雰囲気を大切にしているようで、その気持ちが伝わってきて嬉しい。
家内はBarなんて久しぶりとカクテルが欲しいと云い、若い女性の好む「バイオレットフィズ」なぞを注文した。わたしはバランタインをロックでと洒落て見た。そのあと、わたしも「バイオレットフィズ」なるものを頼み、家内は「ピニアカラーダ」とかいうカクテルをオーダーした。ホワイトラムとパインジュースとココナツミルクを組み合わせたものだそうだ。「K6」ではこれに細かく刻んだ林檎を入れていたが、ちょっと呑ましてもらったところ、結構、「イケタ」。
ピニアカラーダ グラス カクテル
「K6」の名前の由来について訊ねた。オーナーが求める理想のBARのコンセプトが6つあり、それを意味する言葉がKの頭文字を持つ6つの英単語で表せるのだという。それを目標にしたお店造りということで、「K6」としたとのこと。
そして「6つのK」とは、KING,KEY,KNOWLEDGE,KOH−I−NUR(「コ・イ・ヌール=光の山」=ビクトリア女王所有のダイヤモンド),KALEIDOSCOPE(万華鏡)と、6つ目に名誉、ノアと云われたが、いま思い起こしてみてもKが頭につく該当する英語を探すことが出来ない。ともあれ6つのKを目指した店づくりを理想としているということである。
京の夜も更け店内はまたわれわれだけとなり、さすがに退散することにした。マスターに外までお見送りいただいた。高瀬川の暗がりに和船がぼ〜っと浮かぶ。そして暖簾を仕舞った「やました」の前で灯を落とした町屋通りに入り、心地よい夜風を頬に受けながらぶらぶらと歩いた。
高瀬川に浮ぶ和舟 暖簾を入れた「やました」 灯の落ちた町屋通り
ホテルの入口近く暗闇のなかバイクを置いて近寄ってきた背の高い不審な男性が声を掛けた。「いま、お帰りですか」と、聞き覚えのある声色である。
何と、「やました」の松岡君であった。時刻は日付も変わった12時過ぎである。わたしたちに気づき、わざわざ挨拶に来てくれたのである。われわれお客が帰った後も後片付けなどでこんなに遅くなるのだと、改めてお客をもてなす仕事と云うのは隠れたところでこうした努力があるのだと、当り前のことを知らされたものである。
京都最後の夜に思いがけず「やました」の松岡君にお会いでき、「また、来るね!気をつけてお帰り」と挨拶ができたことは、なんとも心温まる気分であった。最後までハプニングに満ち、ワクワクし、そしてすこしロマンチックですてきな「やました」の夜でありました。
そして次にK6を訪ねるときに、最後のKは何だったかを確かめようと思う。
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