参議院東京選挙区の丸川珠代候補者(自民党公認・元テレビ朝日アナウンサー)が16日、新宿区役所で期日前投票を行なおうとしたところ、投票資格がないとして拒絶されたことがわかった。拒絶の理由はいたって単純で、約3年前に海外勤務(ニューヨーク)から帰国した際に転入届を同区にこの4月までに提出していなかったため、投票権が消滅したままであったということである(公職選挙法第9条第2項)。

 

同候補は「忙しくて(転入手続きを)忘れてしまって」と釈明したということだが、その釈明を信じるとすれば、20059月の郵政総選挙やこの4月の都知事選挙を棄権したことになるし、投票に行こうと思いすらしなかったことになる。投票に行っていればそのときに転入届が出されていないことに気づいたはずだからである。国政の場に打って出ようとする人物として、またこれまでジャーナリストの端くれに名を連ねていた人間として、これまで「参政権」の意味をどう考えていたのか、その思考の底の浅さを見るようで悲しい。正直、本人に問うてみたいものだ。

 

 そしてわたしは今回の同候補者の行動を知って、投票を棄権したのは実は、帰国後のこの3年間だけではないのではないか、渡米する以前からの棄権常習者だったのではないかと強い疑いを抱いたのである。

 

 何故なら、いくら帰国ボケといっても、選挙管理委員会から事前に送付されてくる投票所入場券を投票に行く際に持参することを忘れることなどありえぬと思うからである。何度か投票所へ足を運んでおれば、投票所で投票管理者が選挙人名簿と入場券を照合し、本人確認を行なうことを知らぬはずはない。そのチェックを経たうえでないと投票用紙が手交されないことは常識である。わざわざ投票所に出向いてきた選挙民で、投票所入場券を忘れたなどという光景をわたしの経験のなかで今まで目にしたことはない。

 

同候補者が投票に行こうと思い立ったときに手ぶらで出かけた行動こそ、これまで投票という行為の習慣がなかったのではないかと詮索せざるをえず、実は棄権常習者ではないのかと強い疑いを抱く所以なのである。

 

 622日、自民党本部での出馬表明の際、女子アナ時代、反自民的発言を続けてきた同候補者が与党候補者として立候補する大義を「自分の熱い思いを届けるならば政権与党の真ん中に入るしかない」と説明した。

 

民主主義の世界において投票という行為は、国民である己の意思を政治に表明する最も直接的かつ高位にある参政行為である。国政の場において「政治に熱い思いを届け」たいほどの人物であれば、選挙民の立場にあったときには、まずその参政権を行使することでその意思表明、熱い思いを届けていたはずだと考えるのはわたしだけだろうか。

 

同候補はそのオフィシャルサイトの「私の決意」の結びで「権力が過ちをおかしたときには、もちろん獅子身中の虫となってその過ちを正す覚悟です」と述べている。同候補者が立候補表明の場において発言した「政治への熱い思い」は一体、本物なのか。今回の期日前投票拒絶事件で「その思い」に残念だが?をつけざるをえない。こうした丸川珠代のような人物を国政の場に登場させることこそ、「民主主義の獅子身中の虫」を育てることにつながってしまうのではないか、そうわたしには思えて仕方がないのである。