厚生労働省が21日午前零時10分という異様な時間帯に緊急記者会見を開き、タミフル服用につき「緊急安全性情報」を出し医療関係者へ注意喚起を呼びかけたと発表した。あらたに10代の男児2人がタミフル服用後、自宅2階から飛び降り骨折を起こすという異常行動が20日に同省に報告されたことを受けての深夜の記者会見であったという。

タミフルはA型およびB型インフルエンザウイルスに対して効力を有するインフルエンザ治療薬である。02年と03年にはインフルエンザの流行にともない国内的にタミフルが不足し、大きなニュースになったことはまだ記憶に新しい。
 
また、1997年の香港での大流行に始まり、03年と04年の東南アジア地域において鳥インフルエンザが流行したことを受け、WHO等が04年1月、鳥インフルエンザについて「世界的な流行を引き起こす、非常に危険な人間の伝染病に変異する可能性がある」と警告する共同声明を発表した。鳥インフルエンザへの恐怖が人々の不安を掻き立てるなかで、ワクチンができるまでの一時的な対策としてA型ウイルスの増殖を抑制する効果があるとされる「タミフル」という治療薬の名前が人口に膾炙(かいしゃ)するようになった。

そのタミフルをこの日本は世界の使用量の約4分の3もの量を使用している。タミフルのように経口投与はできないが「リレンザ」という薬効は同様の治療薬があるのにである。そしてこのタミフルはスイスの製薬メーカーであるロシュ社が製造、日本では中外製薬が輸入販売を独占している。

そうしたなかで2月28日、厚労省はタミフルを服用したと見られる仙台の中学生がマンションから転落死するなどの事故報告が続いたことから、「インフルエンザ治療に携わる医療関係者の皆様へ(インフルエンザ治療開始後の注意事項についてのお願い)」という文書を発状した。

そのなかで自宅において療養を行う場合、
(1) 異常行動の発現のおそれについて説明すること
(2) 少なくとも2日間、保護者等は小児・未成年者が一人にならないよう配慮すること
と注意喚起をうながした。

しかし、その一方で、「現段階でタミフルの安全性に重大な懸念があるとは考えておりません」と、タミフル服用と異常行動との「因果関係は明確ではない」とも述べている。

その大きな根拠とされたのが、同省が横浜市立大学大学院小児医療学の横田俊平教授が主任研究者の研究チームへ委託した44頁からなる調査報告書「インフルエンザに伴う随伴症状の発現状況に関する調査研究」(平成17年度)と「薬事・食品衛生審議会医薬品等安全対策部会安全対策調査会」での議論結果である。

その前者の調査報告書をまとめた横田俊平教授の講座に中外製薬からここ数年、平均して約150万円の資金が研究費として大学をスルーし渡っていたことがこの12日に発覚した。また厚労省の元課長(58)が中外製薬に天下っていた事実も20日の参議院厚生労働委員会で明らかにされた。

この構図は帝京大学医学部長で厚生省エイズ研究班の班長(当時)を務めた安部英(非加熱製剤の使用継続を決定)、医師で厚生省生物製剤課長(当時)であった松村明仁(非加熱製剤の回収命令を出さず被害を拡大)、非加熱製剤を製造していた製薬会社ミドリ十字の元代表取締役社長の松下廉蔵等が業務上過失致死容疑で1996年に逮捕・起訴された薬害エイズ事件と酷似している。

今回のタミフル問題に対する厚労省・医学界・製薬会社の息の合ったとでも表現するしかない見事なトライアングルを見ていると、10年前に起こった薬害エイズ事件とあまりにも似ていることにびっくりするである。そしてこの医療業界をめぐる構造的な問題は何も変わっていないのではないかと。

10代の子供たちの異常行動とタミフル服用との「因果関係は明確ではない」と、つい3週間前に明言した厚労省が、なぜ突然、しかも午前零時などという時間に、3年ぶりとなる「緊急安全性情報」を出したと発表する必要があったのだろうか。国民はかえってその異様な発表のあり方にあらぬ疑問や不安を抱いてしまうのではなかろうか。「因果関係は明確ではない」はずの厚労省の深夜の発表の「真意」は何か? 

わたしはそこに薬害エイズ事件の負のトライアングルをどうしても思い描いてしまうのである。