「実刑」と「執行猶予」、ライブドア判決が語る司法の驕った目線(上)

16日、証券取引法違反の罪に問われた堀江貴文被告に対する判決が、東京地裁により下された。罪状は「有価証券報告書の虚偽記載」と「偽計・風説の流布」の二つ、その罪は懲役26月の「実刑」であった。

 

 最近、証券取引法違反で大きく取り扱われたものとして、西武鉄道、カネボウそして日興コーディアルの事件がある。

 

 西武鉄道は20041217日に上場廃止となった。東証はその廃止理由えお記載し、それに(注)として、「(株)コクド等が実質的に所有する個人名義株式の存在が判明したとして、西武鉄道(株)が有価証券報告書等の訂正を行った件について、同社に報告を求めたところ、本件株式は少なくとも昭和32年頃から継続して存在し、その数量は株式の分布状況に係る上場廃止基準に定める要件(少数特定者持株数比率80%以下)に抵触する水準に及ぶなど投資判断の基礎となる重大な情報に誤りがあったことが認められ、また、こうした事態は、同社の内部管理体制等組織的な問題に起因するものと認められたことなどから、同社株式の上場廃止を決定したものである」と、異例の注意書きを付け加えた。

 

 またカネボウは2005613日に上場廃止となった。その廃止理由は「株券上場廃止基準第2条第1項第11号a(上場会社が財務諸表等に「虚偽記載」を行い、かつ、その影響が重大であると当取引所が認めた場合)及び同号b(上場会社の財務諸表等に添付される監査報告書において『意見の表明をしない』旨が記載され、かつ、その影響が重大であると当取引所が認めた場合)に該当すると認めたため」と、西武鉄道と若干の違反項目の違いはあるもののほぼ同文となっているが、西武鉄道のような「注意書き」は添えられず、通常の上場廃止告示の定型文であり簡素なものである。

 

 日興コーディアルにいたってはつい先日、上場維持が決定したばかりである。東証の監理ポスト割当ての解除理由は「株券上場廃止基準第2条第1項第11号a(上場会社が有価証券報告書等に『虚偽記載』を行い、かつ、その影響が重大であると当取引所が認めた場合)に該当しないと認めたため」と、影響は大きくないとの判断であった。

 

 そしてライブドアは2006414日に上場廃止となった。その廃止理由は定型文につづき、西武鉄道と同様に注意書きがある。長文になるが、重要な事柄が含まれているので東証の「お知らせ」をそのまま転記する。

 

「(株)ライブドア及び同社元代表取締役等5名が、証券取引法違反(虚偽記載)の嫌疑で証券取引等監視委員会により告発された件で、同社は、平成16年9月期連結財務諸表について、経常損失を計上すべきところを多額の経常利益を意図的かつ組織的に計上したものとされている。これは、その金額において重大であり、投資者の投資判断にとって重要な情報を故意に偽った点で悪質であり、これを組織的に行った点で上場会社としての適格性を強く疑わざるを得ないものである。また、同社及び同社元代表取締役等4名が、証券取引法違反(偽計取引及び風説の流布)の嫌疑で同委員会により告発され、東京地方検察庁により起訴された件で、同社は、子会社等と共謀の上、自らの利得を企図して、子会社の株価に影響を及ぼす等の目的で虚偽の事実を公表し、あるいは公表すべき事実を公表しなかったとされている。さらに、同社の平成18年9月期第1四半期に係る四半期財務諸表等については、監査法人は意見表明の手続が実施できなかったとして結論を表明していないうえ、同社株式については、開示注意銘柄への指定を行っているものの、未だ重要な会社情報についての開示が十分になされたとは到底いえない状況である。こうした状況は、投資者の証券市場に対する信頼を著しく毀損するものであると認められる」

 

 さて西武鉄道は「注意書き」にあるが、約半世紀にもわたって実際は上場基準に満たぬ少数特定者持株数比率をあたかも基準以上にあるように偽装してきた。西武鉄道は言うまでもなく公共交通機関を運営し、傘下に西武ライオンズという子供たちに夢を与える球団を抱えるなど著名な大企業である。H183月期の連結売上高は4346億円、連結経常利益は119億円と、営業規模も大規模な実績を誇る会社が、株式市場を50年間もの長きにわたり欺瞞しつづけてきた。本来上場されているはずのない企業の株式が、50年間にわたり、東証の市場で日々取引きされてきたのである。

 

 加えて西武・コクドグループを率いるワンマンオーナーであった堤義明氏は、逮捕前は西武ライオンズのオーナーや日本オリンピック委員会の会長を歴任するなど要職を務め、米経済誌「フォーブス」で世界一の大富豪と紹介されるなど、日本の政財界にも幅広い影響力を有する実力者であった。

 

 またカネボウにいたっては今から120年前に創立され、戦前戦後を通じて日本産業の中核にありつづけ、経済成長の一翼を担ってきた堂々たる名門企業である。その由緒ある大企業が債務超過を免れるために2年間で約800億円もの粉飾決算を行ったのである。ちなみに粉飾額訂正後の20033月期の連結売上高は5184億円、連結経常利益50億円(債務超過2180億円)の規模であった。

 

下に続く