久間防衛相の米軍再編に関連する発言が今年に入り迷走を続けている。いや迷走振りを演じている。いったいその本意はどこにあるのか。

 

3日に訪問先のタイで、昨年10月に日米両政府が合意したキャンプ・シュワブ沿岸案(名護市)への移設案について「滑走路は1本でもいい」と発言し、沖縄県との修正協議に柔軟姿勢を示したかと思うと、帰国後の14日にはNHKの討論番組で「基本計画に基づいて」と述べ政府間合意案を優先させると前言を修正した。

そして27日の長崎県諫早市内の講演ではさらに、沿岸部案について「日本は地方分権になっている。米国に『あまり偉そうなことを言ってくれるな。知事と一生懸命話しているから、もうちょっと待ってくれ。日本のことは日本に任せてくれ』と言っている」と米軍批判を展開し、強気の姿勢を演じて見せた。

 

また24日の日本記者クラブで「核兵器がさもあるかのような状況でブッシュ米大統領は踏み切ったのだろうと思うが、その判断が間違っていた」と、ブッシュ大統領のイラク開戦の判断を批判し米国政府を逆なでするようなパフォーマンスをし、米国に言うべきことは言うとの強い姿勢を示して見せた。

ところが7月末に期限の来るイラク復興支援特別措置法の延長問題については、「(イラク派兵の)出発点が間違っていようがなかろうが、イラク復興のため、政局安定を図らなければいけない」と、述べるなどイラク特措法の延長は必要であるとツボは押さえている。

 

この一連の同防衛相の迷走発言の流れをじっくりと検証してみると、同相というか日米政府の巧妙な意図が透けて見えてくる。要は普天間飛行場の移転問題は日米政府の合意案で粛々と進められることは既定路線であり、すでに決着済みなのだと。ただ沖縄県民の心情に十分配慮したとの姿勢をどう演じて見せるかということだけなのだと、そう思って久間防衛相の発言を見てくると、いかにも米国に対して強硬意見を言っているようでありながら、合意案と反対に動きが進みそうになる前に軌道修正を上手に図っていることに気づく。日米政府間で事前に周到に練られたシナリオによる出来レースだと考えると、これほど沖縄県民と日本国民をコケにした話はない。

 

これが政治の妙といえばプロの政治評論家であれば、そこで悦に入るところだろうが、国民をそう甘く見ないでもらいたい。今後、普天間基地の移転問題の帰趨に注目してみようではないか。もし辺野古のジュゴンの海を破壊するV字型二本滑走路の政府合意案のままに進むとすれば、これほど国民を馬鹿にした話はない。こんな臭い芝居ではいまどきの目の肥えた視聴者の視聴率を稼ぐことなどできないのだから。真剣勝負こそ大向こうをうならせるのだということを久間防衛相は知るべきである。