松下電器欠陥石油温風機回収、「時は金なり」?

 

 松下電器産業の欠陥FF式石油温風機の回収が、経済産業省の「緊急回収命令の発動」から1年経って、まだ全体の3割にあたる4万台が未回収であるとして、同社に対してさらに回収を急ぐよう指導したと、お昼のNHKニュースが伝えた。正直、ほとんど終わった話だと思っていたので、同社のリコール対応のあり方に強い関心をもった。

 

 この石油温風機は1985年から1992年までの間に製造されたもので、平成17年1月、2月、4月に合計3件の一酸化炭素による中毒事故が発生(内1件は1名死亡)、経産省の指示により4月21日、同社は社告を行ったうえでリコールを開始した。しかし、11月に4件目の事故が発生、同月29日付で消費生活用製品安全法第82条の規定に基づき、該当する製品の回収又は点検及び改修、危険性の周知等必要な措置をとるよう同省の「緊急命令」を発動されたものである。

 

 その時点での対象製品の販売台数は152,132台である。そのうち措置済み台数は55,499台(回収率36%)、未対応のものが96,633台であった。今日のニュースによれば、この一年間で56千台が回収され、まだ4万台が未回収ということである。当該製品の発売時期から推測して、最も新しい製品でもすでに14年、古いものは21年の年数が経過しており、既に廃棄処分されているものも相当数あるのかも知れぬ。しかし事故が起きれば死亡事故につながる欠陥を抱えた製品である。最悪の場合、まだ4万台もの危険な石油温風機が一般家庭等で使用されていると想像すると、一日も早い回収に尽力すべきである。

 

 この一年間の松下電器の対応を見ていると、同社が人命にかかわる重要性をどの程度認識しているのか分かりかねるところがある。現在、この欠陥温風機の回収に際し、引き取り代金5万円を渡すと、同社のHPに記載されている。わたしはこれを見て、同社の危機管理に首を捻らざるをえないのである。もし、不幸にもまた死亡事故でも起きれば、同社のこれまでのリコール対応の遅さは大きく批判され、それによる企業イメージの悪化は計り知れないものがある。そう考えれば一刻も早い製品回収を望むのは、同社の人間もおそらく同様であろう。

 

 わたしが松下電器の人間であれば、企業の人命重視の姿勢、危機管理の観点からも、早期回収策として引き取り代金の大幅引き上げを提案する。たとえば「1台当り30万円を支払う」と言えば、不謹慎かも知れぬがちょっとした臨時収入である。わたしは早速に物置や押入れその他考えつくあらゆる場所を探すこと請け合いである。30万円×4万台=120億円。最大で120億円の負担で松下電器は人命重視の姿勢や企業の危機管理のあり方を世にアピールでき、しっかりとしたコーポレートガバナンスを示す絶好の機会を得ることができるとも言える。

 

05年度の同社の売上高は88,943億円、税引き前利益は3,713億円である。また広告宣伝費としてトヨタの1,029億円に次ぎ日本第2位の792億円もの巨額の金額を計上している。その同社にとって、120億円という数字は決して大き過ぎることはないと考える。さらに一台50万円として200億円。この金額でも大「松下電器産業」の人命重視の姿勢をアピールする数字としては決して高くはないと思うが、経営陣はいかがお考えであろうか。危機の時間を金で買う、まさに「時は金なり」である。

 

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