石原都政の象徴、新銀行東京の赤字

 

 11月30日に新銀行東京の第二期中間決算が発表された。同行は貸し剥がしで中小企業いじめをする大手銀行を批判する石原都知事の肝いりで、『資金調達に悩む中小企業を救済すること』を理念とし2005年4月に鳴り物入りの誕生をみた。その設立は銀行バッシングが続く世論を背景に、か弱き中小企業をいじめる悪者の大手銀行に立ち向かう正義の味方の登場といった風で、当時、木村剛氏らが興した日本振興銀行(2004.4設立)とあわせて世間の話題をさらったものである。

 

 BNPパリバ信託銀行を買収、名称変更を行い、再開業して2期目の中間決算である。スタート時の「マスタープラン」では3期目の来年は単年度黒字を達成する計画である。ちょうどその折り返し地点に来た恰好である。この9月中間期の赤字は当初予想純利益(▲100億円)を5割上回る▲154億円に上った。この結果、累積欠損は456億円に膨らんだ。石原都政はこの新銀行発足に際し、「官から民への動きに逆行」、「利子補給あるいは保証による信用補完でよい」といった内外のさまざまな意見にもかかわらず1000億円もの都税を惜しげもなく投入した。まだわずか一期半の決算でいたずらに結論を急ぐべきではないが、創業赤字とはいえ投下資金の半分がすでに消滅している。

 

 理念でもある融資・保証残高は平成18/3末実績の1,930 億円から今年度末計画の4,300億円(平成18/3末比純増2,370億円)に対し、この9月末残高は2,820億円(同890億円)と、今半期計画の約8割の達成率にとどまっている。この資産が増えぬことには黒字化は遠のくばかりである。一方で、預金残高は5,436億円にのぼるため、残る運用を国債に依存するかたちで今中間期残高は1,860億円に達し、半期の純増額は融資・保証額にほぼ肩を並べる758億円に及んだ。国債の保有は今後、金利上昇が予想されるなかでは含み損を拡大させる懸念を有するものである。そうした資産が運用の本業である融資・保証残高の2/3も占めるのは、財務的には金利上昇局面にきわめて脆弱な不安定さを持つ構造であると指摘せざるを得ない。その意味で現状の金融マーケットにおいて新銀行東京はきわめて困難な状況に置かれていると言うしかない。

 

 『資金調達に悩む中小企業を救済する』理念はすばらしいが、当時、「中小企業貸出が伸びなかった」原因がどこにあったかという実態分析を軽視した理念先行の石原都政が、この新銀行を都財政のお荷物にさせぬことを祈るばかりである。新銀行東京の不良債権比率はこのわずか半年間で0.9%から2.0%へと大きく増加している。

 

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