北朝鮮核実験、さて日本はこれからどうする――核保有の是非

 

 『北朝鮮外務省が10月3日、「科学研究部門で今後、安全性が徹底して保証された核実験をする」との声明を発表した』と、朝鮮中央通信が伝えてからわずか6日後の10月9日、

同通信は「地下核実験を実施した」と報道を行なった。実験の詳細は明らかにされていないが、韓国で同日午前10時35分頃にM3.5の地震波が観測された。

 

 それから北朝鮮を巡る核実験問題は一挙に国際政治のトップマターとなった。交渉の場はこれまでの6カ国協議の場から国連へと移り、14日午後国連安全保障理事会が核実験実施を発表した北朝鮮に対し、経済制裁を規定した国連憲章第7章第41条に基づく制裁決議案を全会一致で採択した。

 

 安保理での日米の強硬姿勢に対し中・露が難色を示す場面はあったものの、強制措置を含んだ国連憲章第41条に基づく制裁決議が、核実験発表後わずか5日でスピード採択された意味は大きい。それほどに今回の北朝鮮による核実験実施の発表は世界を震撼させた。なかんずく北東アジアの軍事均衡に大きな地殻変動を起こすことになった。日本は日本海を隔てた指呼の距離にある隣国であり、その安全保障上、こうむる影響は計り知れない。

 

北朝鮮は19933月に最初の「核兵器不拡散条約(NPT)からの脱退」を表明したが、この時は、NPT条約で定められている三か月後の脱退発効のぎりぎりで、米国との間で「脱退の一時停止」で合意した。そして、20033月にふたたびNPTからの脱退を表明、8月に北京で第1回6者協議、10月には北朝鮮、使用済み核燃料棒の再処理を終了と発表した。

 

045月に小泉前総理の電撃的訪朝による日朝首脳会談でミサイル発射凍結を再確認したものの、052月に北は外務省声明で「核兵器の保有」を宣言するにいたった。 そして055月には、北朝鮮寧辺の原子炉から「八千本の使用済み核燃料棒を取り出す作業を終えた」と明言し、国際社会を恫喝した。

 

 一方でその年の9月の第46者協議では、北朝鮮がすべての核兵器および核計画を放棄し、NPT復帰などを約束した共同声明を採択。適当な時期に北朝鮮への軽水炉提供問題を議論することでも合意を見る形となったが、北朝鮮側は軽水炉提供後のNPT復帰を主張し、合意の実効性に疑問が持たれていた。

 

そうしたなか、今年に入り75日にテポドン2号など計7発のミサイルの発射を実施した。 国連安全保障理事会は同月15日に北朝鮮非難決議を全会一致で採択した。続いて10月3日、「安全性が徹底的に保証された核実験を行うことになる」と北の外務省は声明を発表。109日の朝鮮中央通信の「地下核実験を実施した」という報道につながる。

 

こうした核開発再開へ向けたこの10余年の北朝鮮の動きのなかで、この国は今日の脅威に対して、国民の生命と財産を守るために何の準備をなしてきたのか。これまで国家の安全保障論を神学論争に貶(おとし)めてきた野党の責任は重い。しかし、政権党である自民党の責任はそれ以上に重いと云わざるを得ない。国家の安全保障に対する危機意識の欠如、平和ボケと言うしかない。この10年余で上述のような北朝鮮を巡る核兵器開発の動きが顕在化していたなかで、政府は実効的な対応策(ミサイル防衛システム網の整備等)、や法律の整備を怠ってきた。今日の弥縫(びほう)的な対応を見ていると、そう断じるよりほかはない。

 

ここに至り、この日曜日(15日)に中川昭一自民党政調会長がTVで日本の核兵器保有について、「議論は行なっていい」という認識を示した。そしてこの発言に対し大手メディア、野党、与党の一部からも一斉に非難が集中し、同氏も翌16日には「私は、非核三原則をいじると言う事は一言も申し上げておりません。議論をすると言うことと、非核三原則を守るということは決して矛盾しません」と、釈明をせざるを得ない状況となった。

 

しかし、中川政調会長の発言のどこがおかしいのか、わたしにはわからない。

 

「被爆国の日本の責任ある立場の政治家発言とは思えぬ」「非核三原則を踏みにじるのか」「国連で制裁決議をした足元での発言はまずい」「北朝鮮の核保有を破棄させようと国際社会で一致団結して行動している横で、自国も核保有の検討を開始するなどとはもっての他」といった批判が多いが、それでは批判する人々に問いたい。

 

「将来朝鮮半島が統一され、中・露・米・朝という核保有国に囲まれたとき、わが国の国防・独立国家として進むべき道を、あなた方はどう考えるのか」

 

 現在、米国は自分の意向に沿わぬ国家体制を有する非核保有国は、米国の国益に反すると一方的に判断された場合、軍事侵攻により有無を言わさぬ隷属を強いられている。アフガニスタン、イラク然りである。しかし、あれほど批判されていたパキスタンも核保有国となってからは、対応は明らかに異なる。

 

 他の核保有国が軍事力の増強を図ってゆき米国との対立軸を形成する力を有したとき、わが国はどうするのか。日米安保の下、独立とは名ばかりの実質米国51番目の州に編入してもらう道を選ぶのだろうか。

 

 核を持たず民族の誇りも捨てて、隷属の道を選ぶのであれば、核保有や安全保障の議論などする必要はない。吉本興業のお笑いタレントで牛耳られたTV画面に、大口開けて笑っておればよい。もしそれが嫌であれば、独立国家とは何か、自分で国を守るとはどういうことなのかを議論すべきであろう。もう残された時間は多くはない。その意味で、今回の中川政調会長の発言も、ひとつの筋の通った考え方であるとわたしは考える。国家百年の大計を考えるのに、議論することすら許されないなどという馬鹿げた話はないはずである。

 

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