優勝馬のレールリンクと二分の一と首差で三着に終わったディープインパクト。今、午前一時二九分である。世界一の競走馬を選ぶフランス凱旋門賞競馬。老骨に鞭打って見てしまった。
残念!いや〜惜しかったねぇ。武豊騎手がNHKの記者にレース直後に感想を求められて、しばらく無言で、「残念でしたね」と言葉短く答えた気持ちに日本人の心すべてが籠められていると思った。
このレースは私にとって世界を舞台にした勝負の厳しさをまたあらためて知らされた瞬間でもあった。わたしは競馬というものにそう関心はない。馬券もこの年になるまでに一回だけ買っただけの、いわば競馬に関して何か語れる人間ではないことは知っている。
でも、今夜は夕方仮眠をとって午前零時三十五分の出走に備えた。何か日本の代表が世界に飛び出すのではないか、一人頑張るというその潔い決意に久しぶりにかさついていたわたしの心が躍ったのである。テレビのスイッチを入れたら単勝1.1で一番人気。期待はいやましに増した。
ディープインパクトは8頭のうちで最後にゲートに入り、そしてゲートが開いた。いつもと違い先頭の馬群にディープがいた。ライバルは後方で君を見ているぞと、つい心ならずも叫んでいた。
そしえ、結果は一位のレールリンク、二位のプライドに次ぐ、結果は三着であった。最後の直線でトップに立ったときに、得意の差し足で勝てると思ったが、甘かった。世界の壁というより勝負の奥深さを知らされたというのが正しい。やはり世界というより勝負は甘くない。強敵と戦前に言われた昨年の覇者ハリケーンランと前哨戦のフォワ賞を制したシロッコを抑えての三着であったが、結果は三着である。負けは負け。
真に「残念」である。武豊騎手の放った短い言葉の意味は重い。その思いもまた私たちの心持ち以上に重い。くだらない洒落を言っている場合ではない。レース後にレールリンクの騎手が、真っ青な芝生の馬場に馬車に乗って現れた。その光景を見てわたしは、その歴史ある席に武豊騎手が乗っておればと、つい涙腺が弛んだ。
二ヶ月余におよぶ現地での調整を終えての参戦。勝機は当然あった。「勝てる」勝負であったと素人のわたしにも思えた瞬間があった。勝たしてあげたかった。ディープインパクトという稀代の名馬に、世界一の冠をかぶらせてあげたかった。レース後に馬場をゆっくりと流して走るディープインパクトの姿になぜか涙が流れてきた。「君は精一杯、頑張ったよ」といっても、多分、その声は届きはしない。でも、必死に最後の直線を走った君の姿をわたしは決して忘れない。あの最後の直線で一瞬、先行しそうになったあの勝利を予感させた瞬間を・・・。
「感激した!」
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