「リハビリ制度改革の患者置き去りの愚行」

 

 この四月の診療報酬改定で、リハビリ医療界に激震が走っている。医療機関で保険診療を受診できるリハビリ日数に以下のような制限が設けられたのである。

 

脳血管疾患

脳腫瘍・脳外傷・脳卒中・脊髄損傷など

180

運動器

手足の重い外傷・骨折後の手術、切断・運動器

の不安定症など

150

呼吸器

肺炎、無気肺、肺梗塞開胸手術後など

90

心大血管疾患

急性心筋梗塞・狭心症・冠動脈バイパス手術など

150

 

 一方で、一日当たりの訓練時間は1時間20分から2時間に拡大された。早期リハビリが機能回復の効果が高いとの知見から、早期の集中的リハビリを可能とすることが目的といわれる。

 

 早期治療が目的であれば、一日当たりの診療時間を、米国の臨床実験で最も効果が高いといわれる3時間/日に延長すれば事足りる。厚労省は期限を設けた理由として、「これまで効果が明確でないリハビリが長期間続けられるケースが多くあった」を挙げている。これは、ある側面は役所の言うとおりの実態が医療現場にあるといってよく、その理由の一面には肯くところはある。しかし、リハビリをどれだけの期間必要とするかは、患者によって、それこそまちまちである。そのことを賢いお役人が知らぬはずはない。

 

 厚労省のいう「長期間続けるケース」は、町医者的な整形外科院で長々と続けられている赤外線治療や温湿布治療などをいっているのだと思う。通常、街の整形外科院にリハビリの専門の理学療法士や作業療法士を常時、配置しているケースは、コスト面からそれこそ少ないのである。リハビリに素人の医療従事者が、患者の気休めに漫然と赤外線治療などを施し続け、医療報酬を貪(むさぼ)っている実態を厚労省は、指弾し、止めさせたいのである。

 

 そのこと自体、医療財政の赤字が年々、増大する状況に鑑みれば、やむを得ぬことではある。要は、本来リハビリ治療の継続を必要とする患者に専門的な療法士の指導を受けさせるために、医療費の無駄遣いとの兼ね合いの中で、どうバランスをとるかということなのである。厚労省のこの施策により、リハビリ医療の現場には、結果として何が起こっているか。

 

 何のことはない、専門のPTOTを指導できる大病院や専門医療機関から溢れ出た患者は、療法士のいない街の整形外科へ止むを得ず通院することを余儀なくされているのである。町の整形外科院は、一人当たりの診療時間には制限がかかったが、受診者数が増えることによって、逆にリハビリの診療報酬は増加しているというのが予想される実態である。財政的には全く逆の効果が出てくる危険性がある。そして、最も大切なことだが、専門治療を必要とされるリハビリ患者が、最大限の機能回復に至るまでの期間、熟練の理学療法士なり作業療法士からの訓練指導が受けれなくなってしまったことに、今回の制度改革は一体、何のために、誰のために行なわれたのかと言いたいのである。

 

 ほくそえんでいるのは、日本医師会傘下の専門の療法士を配備せぬ整形外科病院なのではないか。そして、絶望と不安のなかに放り込まれたのが、脳梗塞などで引き続き長期の専門リハビリを必要とする患者たちなのである。

 

 即刻、リハビリ制度の見直しに手をつけるべきである。歩くことのできぬ、箸を持つことのできぬ患者たちは、泣いているのである。

 

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