とんでもない災禍の年がまずは終わりを告げようとしている。「まずは」と殊更に述べたのは、2020年という一年間はようやくおしまいとなるが、来たる2021年はのっけからコロナウイルスの脅威がおおいかぶさったままで明けて、どこまでこの苦難の道が続いてゆくのかがわからぬという意味合いである。
片倉城址公園の桜
「明けましてもおめでたくない」、そんな息が詰まるような時間の流れのなかでも、春になれば桜前線が南から北へと列島を駆けあがっていったし、秋になると紅葉が北から南へ染め下り、山から里へと錦の帯を拡げて見せた。四国88か所 焼山寺の秋
そんな2020年という不本意な年にも、復活の日はまようことなく決然としてやってきた。
2020年12月21日、冬至の日。
わたしは例年通り、ゆず湯にずっぽり首までつかり、南瓜を大口開けてムシャムシャ食い尽くしてやった。
細君は夕刻になって柚子を買おうと近所のスーパーにいったのだが、たった4個しか残っていなかったという。悪辣極まりないコロナをぶっ飛ばそうと今年は盛大に柚子を放り込んでと目論んでいたが、他人様も考えることは同じなのか、わが家のゆず湯は数足らずでやや貧相なものとなってしまった。
でも物は考え様である。スーパーの柚子がなくなるほどに数多の家庭で柚子の香ばしい薫りを湯屋の窓から解き放ち、列島全体をすっぽり覆いつくしてやったのだと想うと、それはそれで痛快事であり、コロナの悪霊もきっと進軍の足音をひそめざるを得なかったに違いない。