左京区吉田泉殿町1番地・075-761-5311
京漆匠「象彦」でお茶請けに出された和菓子があまりにおいしかったので、つい「どちらのお菓子ですか」と尋ねたところ、「百万遍の『かぎや』の『ときわ木』というお菓子です」とお店のパンフレットまで戴いた。
そこで、翌日、百万遍の交差点、東大路通りを挟み京都大学西側に位置する「かぎや政秋」へ向かった。
お目当ての「ときわ木」をもとめるつもりだったのだが、京都では珍しくショーケースに並ぶお菓子の試食をさせてくれた。その結果といおうか、「かぎや」さんの術中に見事にはまったといおうか、「ときわ木」のほかに異なる趣きを放つ「益寿糖(エキジュトウ)」や「黄檗(オウバク)」、「野菊」とついつい財布のひもがゆるんでいった次第である。
「かぎや政秋」は、元禄9年(1696)創業の「鎰屋延秋(カギヤノブアキ)本家」から大正9年(1920)に分家し創業された。そして、昭和25年に「鎰屋延秋」の廃業に伴い、その銘菓であった「黄梁(コウリョウ)」と「ときわ木」を継承した。
物資不足の戦時下、伝統ある京和菓子のなかでこれだけは残してゆこうと京都府が指定(昭和17年12月)した「和菓子特殊銘柄品」18品のひとつ「かぎや延秋」の「黄梁」が、現在の「黄檗」である(お店に確認済み)。
「かぎや」の菓子4種類(ときわ木・益寿糖・黄檗・野菊)を食べて見たが、共通して言えるのが、どれも控えめで上品な味である。だからお抹茶や煎茶をいただく際に、突出した主張をしない「お茶請け」として最適な菓子のように思えた。