アル・ゴア前米副大統領(58)ら環境問題活動家が215日に、地球温暖化の問題解決を訴えるため、「ライブ・アース」と名付けた24時間コンサートを今年の7月7日、世界7大陸の100ヶ所以上で開催することを発表した。世界中のテレビやラジオを通じて「SOS(Save Our Selves)」つまり「自らの手でわれわれを救おう」と呼びかける。

 

それに先んじた2日、ゴア氏はシリコンバレーと呼ばれるサンノゼ市で開催されたコンファレンスにおいて同日発表されたIPCC(気候変動に関する政府間パネル)の第4次報告書に触れ、「気候危機の真実性やその原因の大半が人間にあるとする説に対する疑念は払拭されるだろう」と語った。ゴア氏が民主党クリントン政権の副大統領であった97年、米国は「気候変動に関する国際連合枠組条約の京都議定書」を採択した。ところが共和党のブッシュ政権下の2001年、米国は温暖化防止の枠組みから離脱した。同氏の発言はその共和党の地球環境軽視の姿勢に対する強烈な一撃だったのである。

そしてITベンチャーの経営者や技術者たちを前にして「気候危機はシリコンバレーの企業にとってかってないほどの大きなビジネスチャンス」、「(ITの)皆さんが人類の進路を決め、人類の未来を救えるのだ」と、訴えたという。

 

21世紀最初の年である2001年は「9.11」という悲惨な同時テロがあった年である。米国は環境の世紀と言われる21世紀の初年に、温暖化防止の数値目標を盛り込んだ「京都議定書」の枠組みから離脱した。そして国際テロへの対抗としてオサマ・ビンラディンを保護するイスラム原理主義ターリバーンの排除目的で107日からアフガニスタンの空爆を開始した。それに引き続く一連の対テロ戦略として20033月にイラク戦争を開始、フセイン元大統領の処刑後もバグダットは連日のテロに見舞われ、イラク情勢は混迷を深めており、泥沼化の様相を呈している。

 

 戦争は言うまでもないことだが、直接的に人命のみならず地球上の生命を無差別に殺傷し、そして自然破壊を厭わぬものであり、「環境保護」とは対極にある非人道的・非環境的行為である。

 

 ゴア氏は来年11月の大統領選には立候補しないと語っている。その理由を「温暖化問題がいかに切迫したものであるかを世の中に伝え、解決に結びつけるための活動で手一杯であるから」としている。ゴア氏はかつて情報スーパーハイウェイ構想を企画し、インターネットの爆発的普及に貢献した先見性の実績を有す政治家である。その人物が再び人類の智恵と勇気を信じ、問題解決のため先頭に立って行動するのを見るにつけ、政治家とはこうあるべきものと思うのはひとり私だけであろうか。ブッシュ共和党のみならず、ウォーム・ビズと言ってはしゃぎ、参院選向けにどう選挙民に飴をふるまうかなどと目先のことにしか目の向かぬ日本の政治家などは、家族でハイブリッドカーを利用するゴア氏の爪の垢でも少しは煎じて呑ませてもらったらどうであろうか。