知的財産研究所のとても笑えない話

 

最近、「発掘!あるある大辞典供廚隣埖ぬ簑蠅篦日新聞の「かんもち」盗作など知的財産をクリエイトする立場にあるメディアがその財産権を侵害するという非文明的な不祥事が相次いでいる。先進国などとは口が裂けても言えぬ不祥事の続発に先進文明国?として赤面しきりであり、恥ずかしい思いをしている。

 

 そうしたなかでもっと笑えない話があることを知った。

ある財団が明治大学情報コミュニケーション学部の藤原博彦助教授(1月懲戒免職・委託当時筑波大講師)に委託した海外調査で、派遣滞在費など約1600万円を不正受領されたうえに、提出された報告書に他人の論文の無断転用があったことが特許庁の調査でわかったのである。さらにその報告書「フランスにおける著作権についての考え方の変遷」の内容の96%が複数の著作権研究者の論文からの引用であったことが明治大学の調査結果からもわかった。

 

わたしは今回の事件がなければこの財団法人の存在すら知ることはなかった。今回、話題に上った研究機関の名前は財団法人「知的財産研究所」という。

 

同研究所は「国内外の知的財産に関する諸問題についての調査・研究等を通じ、知的財産の適切な保護及び知的財産制度の国際的調和を図り、これにより我が国産業経済の発展に寄与する」ことを目的として平成元年に設立された。

その同種の組織として昭和31年に「知的財産権の国際的な条約等の研究等を通じ、国際的な知的財産制度の向上に貢献する」目的で「AIPPI(国際工業所有権保護協会)日本部会」が発足、その後法人化、名称変更という歴史を刻んだ社団法人「日本国際知的財産保護協会」が存在する。

同法人は国際機関の日本部会であり、「知的財産研究所」とはその成り立ち、国際機関の一部会であるという意味において位置付けは異なっている。

しかしわれわれ庶民の目には両方とも目的はまったく同じに見えてしまうのだが、賢いお役人が熟慮の末、設立したのだから、どうしても二つの組織が必要な理由があるのであろう。

 

知的財産研究所」の中山信弘会長(東京大学法学部教授)はHPの挨拶文のなかで「当研究所としましては、21世紀の我が国の社会・経済の健全な発展を願い、知的財産に関する総合研究機関となることをめざして知的財産に関する各種の事業に取り組み、知的財産の適切な保護並びに知的財産制度の国際的な調和のため、できる限りの貢献をしてまいりたいと考えております」と、述べている。

知的財産の適切な保護」に貢献すべき研究機関が委託した研究論文における知的財産権の侵害。それも一部ではなく96%が無断転用となれば、論文全体が他人の知的財産を切り貼りして作ったトンデモナイ「痴的財産」ということになる。

 

これはどう転んでも笑える話ではない。本件について同研究所の野沢隆寛常務理事は、「盗用を見抜くのは困難だが、今後は審査を強化したい」と話しているが、これまた知的財産研究員として海外派遣研究員制度を設ける同財団の常務理事の発言としては、あまりにも能天気で簡単に笑って済ませる話ではない。

 

 さらに同研究所の常勤理事大森陽一専務理事(元特許庁特許技監)と野澤常務理事(元特許庁総務部長)の2名となっており、要は特許庁の典型的な天下り機関であることがわかる。それぞれの常勤役員の報酬は役員報酬規程細則で専務理事の年俸が1860万円、常務理事が1700万円と定められている(同研究所HPより)。そして非常勤理事には先の社団法人「日本国際知的財産保護協会」の吉田豊麿理事長(元特許庁特許技監)も就任しており、特許庁天下りフランチャイズの構図も同時に透けて見える。

 

ちなみに平成17年度の調査研究概要を見ると、25に上る調査項目はすべて「特許庁産業財産権制度問題調査研究」と「特許庁委託産業財産権研究推進事業」として受託されており、この研究機関の実態が何であるかをよく表わしている。今回のケースなど特許庁が委託調査するものは、なぜ大学そのものに直接、委託しないのか、また野村総研など公正な第三者シンクタンクに入札発注すれば、費用、質とも良質の委託になると思えて仕方ないのだが、そう考えるわたしはおかしいのだろうか。

また同研究所の平成17年度収支決算書によれば総収入の7割強を特許庁・経済産業省等からの受託・請負収入486百万円が占めており、まさに税金により運営されていることが数字からも見えてくる。

 

財政再建が叫ばれ国民の年金・福祉が切り詰められるなか、こうした財団に税金が流れる図式は天下り問題と合わせて、これまた本当に笑える話ではないのである。