鳩山由紀夫首相が資金管理団体の偽装献金事件で、元公設第一秘書の政治資金規正法違反の罪で在宅起訴されたことを受けて、24日夜、国民に向けた記者会見を行った。そのなかで、「国民のみなさまに深くおわび申し上げたい」と謝罪した。「鳩山辞めろという声が圧倒的になった場合、国民の皆さんの声は尊重しなければならない」と、辞任する気はないが、国民が言うのならば辞任も考えると自身の進退問題も語った。

 

そして27日午前、恒例となった官邸前のぶらさがり会見で、母から多額の資金提供を受けていたことを受け、約6億円の贈与税を納税したことを公にした。しかも「修正ではなく申告して(約6億円を)納税した」と胸を張るようにして付け加えた。
 

 何せTVなど大手メディアのこの問題に対する扱い・論調は、あまりに温かく、国民もいまひとつ理解しがたいのである。加えて、庶民にはあまりに金額が大き過ぎて、よく事の重大性がわからぬところに、この問題の難しさがあるように思えてならない。

 

「お金持ちって、そうなんだ〜」

「年に18千万円もらってても知らない」って、言ってみたい・・。

「大富豪って金銭感覚がズレてて常識がないんだ。仕方ないのかもね」

 

「億」なんて単位の金額に縁のない庶民には見当もつかぬ、浮世離れした気分で、つい、妙に納得してしまう。あの気弱そうな鳩山由紀夫総理のきょとんとした眼をする表情を見てしまうと、「私は一切、知りませんでした」「6億円の贈与税を支払います」と、サラリと言われると不思議と怒りが分散してしまうのである。庶民の貴種に対する弱み、憧れを巧妙に使ったメディア対策でも駆使しているのではと、勘繰りたくもなる状況である。

 

 そして、こともあろうに「お金持ちにはお金持ちだからこそのこうした苦労もあるんだよな」なんて、分かったような同情的な気分にさえ、つい、陥ってしまう・・・。危ない!危ない!(`□´)コラッ!

 

 しかし、よくよく、この事件、敢えて事件と呼ぶが、その経緯を踏まえて考えてみると、これはずいぶん庶民を愚弄した悪質な脱税事件ではないかということに気がつく。

 

 月1500万円の財産分与、生前贈与は母の鳩山安子の口座から、子供の長女和子、長男由紀夫、次男邦夫にそれぞれ同額、行われている。月で合計金額4500万円、年にすると54千万円もの、気の遠くなるような多額の資金移動が、親から子へと長年にわたって行われて来たのである。

 

 当初、安子の関係者は、それは貸付金であると釈明していたが、そうであれば、長女和子への資金も同様に貸付金でなければおかしい。果たしてそうなっていたのか?

 

 そして長女が贈与税を払っていたのであれば、由紀夫、邦夫兄弟も、その資金を贈与と認識していなければならぬし、長女が払っていなければ、政治管理団体でもない個人が、それだけの多額な金を定期的に受け取って何も知らなかったというのも極めて不自然な話である。

 

 だから、実は長女がどう対応していたかが、一番気になるところである。だが、大手メディアもそのことを、意図的にか、なぜだか詳らかにしていない。

 そして、鳩山首相は今回、これが贈与であることをようやく明らかにした。しかし、そこは修正ではなく、気がついたので事後的に「申告」したという巧妙な形で決着をつけようとしている。悪質な税逃れではない、非課税特権を有する政治管理団体を悪用した相続税逃れのようなことはしていないと言っているのである。
 

 2010度予算を見ても分かるが、この国の税収は37兆円まで落ち込んでいる。われわれも貧者の一灯で所得税、住民税、そして一時所得があった時は、一時所得税をちゃんと払っている。そうした納税額が落ち込んでいる時代に、サラリーマンはガラス張りで納税する一方で、もし大金持ちが税金逃れを長年にわたって意図的に行っていたとしたら、それは到底、許される話ではない。

 

 この問題は、国のトップにある為政者自身の税金納付義務の意識のあまりの低さなのか、悪質な脱税犯罪なのかという視点でよく見ておくべき必要があるのである。

 

そもそも安子の財布である「六幸商会」は石橋・鳩山家の資産管理会社である。資産管理会社とは富豪一族の相続対策を目的に設立されることが多い。したがって、節税を旨とするのは当然であり、税のプロが顧問として目を光らせているのが普通である。そこに介在する人間は決して税の素人などではないのである。税のプロ中のプロと言ってよい。

 

 そうした人間が絡む今回の献金問題で、月々1500万円もの資金移動が、最低でも7年もの長きにわたって一銭の税金も払わずに行われてきた事実は、大きく受け止められなければいけない。

 

 気がついたので「申告」しますで、すまされる問題では決してないのである。今後、国税庁の積極的かつ厳正な調査に期待したいし、ぜひ、この事件の真相を国民の前に明らかにして欲しい。