談合封じの必殺技

 

 日本道路公団の橋梁談合や防衛施設庁の談合事件に続き、直近では県知事の逮捕などに発展した福島、和歌山、宮崎各県発注の公共工事を巡る談合と官製談合事件が相次いでいる。談合という言葉がTVや新聞で聞かれない日はないほどに、この「談合」という犯罪行為は日常化している。正確に言い直せば、事件の「発覚」が日常化している。つまり「談合」は日本中で行なわれており、表面化してわれわれの目に触れるのは氷山の一角と思った方がよいということである。

 

そうした事態を受けて、17日、塩崎官房長官が今国会で官製談合防止法改正案(先の国会からの継続審議)の成立を期すよう二階俊博国会対策委員長に要請を行った。罰則規定がない従来の「入札談合等関与行為の排除及び防止に関する法律」(03年施行。官製談合防止法)を改正するものである。これまでの官の関与行為の3類型に、あらたに「入札談合等を幇助する」行為を追加し、刑事罰として「5年以下の懲役または250万円以下の罰金」を科す内容となっている。そこで法律名も次の下線部分を加えた「入札談合等関与行為の排除及び防止並びに職員による入札等の公正を害すべき行為の処罰に関する法律」に改められている。

 

一方で、悪徳利潤を享受する民の方の罰則はといえば、通常のケースは市場における競争が実質的に制限されたとして「独禁法のハードコアカルテル(不当な取引制限)」に認定される。その罰則は課徴金や損害賠償そして刑事罰として3年以下の懲役又は500万円以下の罰金が課され、又、法人への両罰規定(5億円以下の罰金)と定められている。悪徳利潤の代償としては罰は軽いと言わざるを得ない。

 

そもそも民間の経済行為は経済合理性に基づいて行われる。談合という行為も、何度、検察から摘発を受け科料されようが、総体として算盤勘定が合うから後を絶たないのである。トカゲの尻尾切りで談合の担当者や責任者が懲役罰を受けようが会社は痛くも痒くもない。法人への両罰規定とて、たかだか5億円の罰金が上限である。その程度の罰金額では、談合は「やり得」な経済行為だということである。民間会社が最も怖れるのは倒産である。一回の談合の罰金が、受注額全額に加えて罰金100億円とでもすれば、大抵の談合行為はその経済合理性を失うはずである。

 

検察が膨大な人数と時間をかけて官製談合を暴くコストは、すべてわれわれの税金で賄われている。国民は談合により高い価格の工事代金を払わされたうえに、半永久的な捜査コストを支払わされるという二重の経済的負担を強いられている。毎日流される談合事件のニュースはもうたくさんである。経済的負荷が莫大にかかる罰金規定こそ、談合の息の根を止める談合封じの必殺ゴキブリホイホイと考えるが如何か。

 

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