長野市大門町80 ☎ 026−232−1241
「牛に牽かれて善光寺参り」という諺があるが、この度は“THE FUJIYA GOHONJIN”というイタリアン・レストランに“魅かれて”の善光寺詣でとなった。
“THE FUJIYA GOHONJIN”というお店がJRの会員誌・ジパング倶楽部だったかで紹介されていた。そのアンティークな雰囲気を醸す写真がとても気に入ってイタリアンつきの善光寺参りということになった次第。
「御本陳藤屋」は1648年(慶安元年)に“御本陳藤屋旅館”として創業、旧北国街道善光寺宿の本陣として加賀百万石・前田家藩主の常宿となるなど格式を誇る老舗中の老舗である(藤屋は本陣を“本陳”という字に替えて店号としている)。
その輝かしい歴史を有す旅館業を8年前に休業、“THE FUJIYA GOHONJIN”と名称を変え、ウェディングやパーティー会場、レストランなどを兼営する複合的施設へと変貌を遂げている。
“THE FUJIYA GOHONJIN”のアール・デコ調の風格ある洋館は善光寺の門前町のなかでもひと際目立つ建物であり、ランドマーク的存在となっている。
そんな老舗で戴くイタリアンにわれわれ夫婦は興味津々で伺った。
参道の人影も少なくなった午後7時過ぎ、お店へ着くと玄関内のソファでダイニングルームへの案内を待つ。
そして、いよいよTHE MAIN DINING WISTERIA(ウィステリア)へ向かう。
藤屋旅館時代に、伊藤博文や福沢諭吉、高村光雲などが歩いたはずの板敷きの廊下をいまは靴のままで通ってゆく。
外観は鉄筋コンクリートにタイルを貼ったアール・デコ調であるが、内部は木造数寄屋造の和風建築である。奥まった場所へ長い板の間の廊下を進むのだが、嫌が応にもレストランへの期待は膨らんでゆく。なかなか凝ったアプローチである。
HE MAIN DINING WISTERIA、その空間へ足を踏み入れた瞬間、藤色が浮き出すランタンのほの灯りの世界が目の前に広がる。
当夜は日本庭園の見える窓際にわれわれの席は用意されていた。
窓外には庭の緑が燈された灯りにほんのりと浮かびあがり、どこか幽玄の世界に身を置くような感覚にとらわれる。心奥に静かに緑葉が舞い落ちてきたような、心落ち着く空間である。
まだ開店間近とて、後方を振り向くと店内にお客は少ない。奥に藤をモチーフとする何枚もの大きな壁画が飾られている。
室内を彩る藤色の灯りが“THE FUJIYA GOHONJIN”のディナーの世界を一層、盛り上げてくれる。
当夜の料理であるが、食いしん坊のわれわれ夫婦、いろいろと食べてみたいとアラカルトでオーダーすることにした。
そして、ここは一部屋をワインセラーに改造するなど、ワインも魅力があるとのことで、ワインリストからお薦めの赤ワインを注文した。
まず、アピタイザーに温かい二品を頼んだ。もちろん、それぞれを仲良く半分こです・・・
一品目が“フォアグラのソテー 無花果とパイを添えて”
さぁ、これをどうやって上手に、しかも均等に、いやいや、パイを崩すことなく・・・きれいに分けるのか・・・
その老夫婦のひそやかな神経戦の気配を察知したのか、ダイニングマネージャーの福島香里さんが「お分けしましょうか」と、間髪入れずの好アシスト!!
見てください、このお手並み。
上手でしょ、こんなにきれいに、しかも・・・キ・ン・ト・ウに・・・(*´▽`*)
さすがプロのお手並み、そのあとの料理の仕分けもすべて彼女が依怙贔屓なく?やってくれました。
次のアピタイザーが“ズッキーニのスカモルツァ・アフィミカータ 生ハム添え”
メニューには載っていなかったが、当夜の特別メニューということで奨められてオーダー。
これも見た目ではスカモルツァ・チーズがよく判らなかったが、そこは福島さんがテキパキと仕分けながら懇切丁寧に説明してくれる。
大好きなズッキーニに温かくてちょっとスモーキーなスカモルツァというチーズがおいしい温前菜でした。
次にわたしの好物のパスタ。もちろん、スパゲッティです。
黒豚のラグー スパゲッティ アラビアータというものでした。これも仲良く“半分こ”でした。レトロ調に撮ってみました。
黒豚が予想以上にしっかり入っていたので、ここらあたりでお腹も結構、一杯になりかかったが、唐辛子が上手いように効いているので食が逆にすすんでしまう。パスタはしっかりとした腰で、麺類好きのわたしの喉越しも“GO〜かく”
そしていよいよ本日のメイン。
まず、スズキとじゃがいものロースト。
これまた、しっかりとした大きさでもちろんハーフ、ハーフに切り分けていただきました。ハーフでもこの量です。
それでも、レモン汁をかけてあっさりしていたのでペロッといってしまいました。
それから本日最後のメイン、“ホロホロ鳥のカチャトーラ”
ご覧のように骨付きの大振りの肉です。これは絶対にテーブルスタッフか福島さんのような方にお願いしないと、素人がフォークとナイフで勝負するのは難しい。福島さんの手に掛かれば、次のように見事な因数分解の解が認められる。
もちろん素手で骨を掴みかぶりついてもいいように新しいお絞りも用意されたが、とくにわれわれのようにシュアーにシェアする場合は、迷うことなくスタッフの方にお願いするのがよい。
この最後のホロホロ鳥によりわれわれの胃袋は無条件降伏、壊滅的ダメージ・・・いや・・・幸福感一杯でもう一片のデザートも受け付けぬ状態に・・・ でも、しぶとくわたしはシャーベットをオーダー。
ってなことで、これでこの夜の晩餐も終了・・・と思いきや・・・
テーブルスタッフの可愛らしい岡田さんが、BARの方で残りのワインとデザートをいただいてみてはいかがでしょうかと囁く。ちょっと気にはなっていた場所だったので、それではと移動する。
中庭に面した窓際の二人席が用意されていた。
老年夫婦にはここまで暗くなくてもいいですよと言った感じの、アヴェックには最適なムーディーなBARでした。
テーブルの上に置かれたランプの灯りに仄見える君の笑顔・・・
そう・・・そんな時間が、時代が僕らにもあったねぇなどとお互いに目と目で頷き合いながら、わたしはワインとエスプレッソ・シングルを彼女はシンプル・ブラックをオーダー。
“FUJIYAに魅かれて”の素敵な善光寺参りの一日は静かに更けていったのです・・・
帰りにホテルまでのタクシーをエントランスの椅子席で待つ間、福島さんがずっとわれわれのお相手をしてくれる。
彼女が安曇野出身だと云うこと、そこの有明山神社の奥にある伝説の王、八面大王の墓所といわれる“魏石鬼窟(ぎしきのいわや)”へいったことがあるという話。
われわれも3年前にそのパワースポットへ行ったこと、松本のおいしい“フレンチレストラン澤田”を彼女もよくご存知だったこと、安曇野の旅館、“なごみ野”のお料理が美味しいことなどなど・・・
その福島さんにはタクシーのドアまでエントランススタッフの方と一緒にお見送りをしていただいた。
何だか同郷の人にでもお会いしたような心温まるひと時を最後の最後まであたえてくれたおもてなしのレストラン・“THE FUJIYA GOHONJIN”
一度は訪ねるべき価値のあるとっておきの場所である。
それと・・・岡田さん・・・代々木体育館・・・大丈夫だったかな・・・デング熱・・・次、伺ったときに名刺をいただきますね。