“菊乃井”と言えば、古都京都を代表する老舗料亭。
これまではもちろん敷居が高いのもあったが、旅先で料亭料理というのもいかがなものかという思いもあって、足が向いていない(ただ菊乃井店主は“料亭とは、基本は飯屋”と豪快に割り切っておられる)。
だが、昨年、家内の知人から「露庵・菊乃井は気楽でいいわよ」との情報を入手。
コースが3つあり、7千円からは季節の懐石になるとのことだったので、これにした。後で教えて頂いたが、その季節で食べたいものがあれば、事前に云っておけば用意してくれるとのことでしたので、融通は効くようです。
虎視眈々とその機会をうかがっていたが、此の度、友人のあるお祝いをお昼に、しかも京都でやろうとの話になり、当店を予約したもの。
当日、広島からやって来た友人と二人で、カウンター席中央に陣取った。一見客で大胆な振舞いとは思ったが、そこは年の功。
最初に、紫蘇でつけた食前酒が供される。この梅雨時に切れの良い爽快感がよく似合う。
先付には、雲丹がまぶされた、ワサビをトッピングした雲丹豆腐。これ、ピリッと美味でした。お酒の飲めぬ友人を後目に、あぁ、冷酒を頼んでしまいました。
次に八寸。この季節です。蘇民将来の茅の輪で厄払いもかねた飾りつけが粋で癪(しゃく)である。味も材料も多彩で、これで舌も口の方もパワーアップ。
早速、板場中央にでんと構える店長の村田喜治氏へ。菊乃井本店店主・村田吉弘氏の弟さんです。その村田さんにお写真をと申し出たら快く応諾していただけたので、パチリ!
そしてポーズまで注文してしまう勝手放題。すみませんでした・・・
次に向付。大好きな鯛とシマ鯵、しっかり食べました。もちろん黒龍と一緒にです。
さて鱧の落としです。ここのは身がしっかりしていて、湯引きは嫌いというわたしも満足。梅肉のすり身を二倍酢で溶いた浸けで、いただきました。
あっさり系が多い献立で口がちょっとさびしいころに、芋茎(ずいき)と豚の角煮。お肉のとろける柔らかさと量が少なめなのが、料理のアクセントとして効いている。
箸休めにトマトのソルベ。まさに肉の膏が残る舌に、この酸味が効いたソルベは絶妙の間合いと選択。
そして目の前の火鉢で鮎の網焼き。
琵琶湖の北方で採れた小ぶりの鮎なので、頭からいけるそうです。蓼酢に浸けて、ガブリ!
茄子の田楽。しゃべりに夢中で、たぶん、パクっとやっちゃったかな・・・
そして、鱧の炊込みご飯です。お釜で炊いたご飯でおいしかった。
日頃、飯粒を食べないわたしが、お代りをしてしまいました。味噌汁が牛蒡の掏り流し仕立てで、ぷ〜んと土の香りがしてくるようでお腹がすとんと落ち着くのが不思議であった。
デザートはもちろんわらび餅。アイスクリームもついています。
残ったご飯は折に入れて友人の奥様のお土産とした。鯖寿司もおいしそうだったので、一緒に奥様へ持っていただくことにした。
本来、1時半からの予約受付であったものを、こちらの都合で1時に前倒し頂いたうえ、さらに10分前に席に着き、3時半過ぎまで長居をした。
店主の村田さん自らが、レジの横でわたしのジャケットを抱えて待っていてくれる。腕を通し、店を出ると、外まで店主自らがお見送りする。皆さんにそうされているようで、お客様はもう満足、満足。
菊乃井の名前に気圧されずに、仲間や板前さんたちとも気楽にお喋りし、おいしい料理に舌鼓が打てる。懐石料理といった名前に怖気づく必要もない、至ってフレンドリーな露庵・菊乃井であった。
次回は家内同伴を約して、まだ友人と話足りなかったので、“鍵善”でお薄と生菓子をいただこうと四条通りを八坂神社の方へ歩いて行った。
四条大橋から今年の川床風景をパチリとおさめた。もう少しで梅雨明け、そして、暑い夏がやってくる。月日が経つのが本当に早い今日この頃です。
エッ! “カギゼ〜ン”と言われる京都通のお方もおられようが、まぁ、手近で手頃で、わたしは結構、利用させてもらってます。
だって、箱に幾種類か入った生菓子を「どれにされますか?」って言われて、迷う、あの10数秒の幸せな時間って、そう日常にはないんじゃないのかなぁ・・・