この三連休、秋の蓼科へと足を伸ばした。台風が襲来する前に急きょ、帰京という短い滞在になったが、蓼科の足早の秋を文字通り足早に愉しんだ。
蓼科の秋は朱色より黄色のイメージである。
高い山に囲まれた蓼科には、紅葉する楓が少ない。
ただ、山肌ははっきりとその装いを秋色に変えはじめている。
秋のぬけるような空にその彩りは美しい。
天気の良い連休の前半、蓼科東急の上から紅葉をはじめたリゾートの森の向こうに八ヶ岳の稜線が幻想的な蒼色のグラデュエーションを見せる。
静かな時間である。聞こえてくるのは秋風に蕭々と鳴る木々の葉音と時折、奏でられる小鳥の啼き声のみである。
わが山荘にもいつのころからかハウチワカエデが生育し、庭のあちこちに秋色の迷彩をほどこす。
京都の高雄の燃えるような紅葉とはまたことなった趣きを見せてくれる。
いつものことだが蓼科の秋は束の間である。梢から舞い落ちる葉っぱが地面に散り敷くや冬将軍が凍てつくような真っ白な息を吐き出しながら足早にやってくる。
赤や黄色を装った落葉はその氷のような息であっというまに土色の朽葉へと変じてゆく。
いつものしずかに時を刻む、蓼科の四季のひとこまである。