給食費滞納に見る義務教育無償とは?

 

読売新聞の10月から11月にかけた調査で全国の公立小中学校で2005年度に18億円を超える給食費が滞納されていたことが分かった。滞納の理由について「経済的に困窮して支払うゆとりのない家庭が増えている」との回答がある一方で、経済的に余裕がありながら「『払う必要がない』と言って保護者が支払いを拒否している」との回答も目立ったと伝えられた。この経済的余裕があるのに『払う必要がない』と支払を拒否する親たちの理屈の根底には、「義務教育だから」という一言があるように思える。その行為はおそらく憲法26条2項に言う「義務教育は,これを無償とする」に依拠する確信犯だと推察される。

 

しかし、この義務教育無償の解釈についてはすでに昭和39226日最高裁大法廷で「義務教育費負担請求事件判決」において「義務教育は、これを無償とする」とする具体的範囲が示されている。その無償の範囲を大法廷は次のように説明している。

「国が義務教育を提供するにつき有償としない(中略)同条項の無償とは授業料不徴収の意味と解するのが相当」であるとし、「それ故、憲法の義務教育は無償とするとの規定は、授業料のほかに、教科書、学用品その他教育に必要な一切の費用まで無償としなければならないことを定めたものと解することはできない」との判断が示されている。つまり授業料以外に当たる給食費は憲法でいう無償の範囲には含まれないと言っているのである。

 

一方で給食の経費負担については、「学校給食法」の第6条2項で具体的に定められている。「前項(施設及び設備に要する経費並びに学校給食の運営に要する経費のうち政令で定めるもの)に規定する経費以外の学校給食に要する経費は、学校給食を受ける児童又は生徒の(中略)保護者の負担とする」とある。つまり昼食代は親の負担であると定められているのである。

 

一部自治体はすでに最高裁の判例やこの学校給食法に準拠して、経済的余裕のある親たちに対し簡易裁判所への督促申立てや差し押さえ請求など法的措置に踏み出している。この国は法治国家である。自身の主義主張につき何を思い、主張し、どう行動しようが自由であるが、法治国家である限りその行為が法律を逸脱しているのであれば、その行為を規定する法律が適用されるのは当然である。経済的余裕がある一部の親たちが給食費を納めぬという違法行為をわれわれは法の名のもとに断じて許すべきではない。