2の9 修学院離宮・上御茶屋・隣雲亭から
【隣雲亭からの眺望(2009年1月・2005年11月)】
標高149mという修学院離宮のなかでもっとも高い位置に建つ隣雲亭。下茶屋、中御茶屋をめぐって辿り着いた何の変哲もない平屋から、眼下に浴龍地を、そして目線を少し上げると一望に京洛を見下ろすことの醍醐味。そして遠く正面には京の西山、信仰の山である愛宕山が見える。
後水尾上皇はそうした景観を我が眼に収めることで、徳川幕府に対し真の王者は自分であると、招いた客人に無言のうちに訴えて見せたのかも知れぬ。雄滝から落ちる水音が深閑とした隣雲亭に響き、いかにも巨大な瀑布が手のうちにあるような、そんな思い、錯覚を客人に抱かせるのである。まさに静謐の中で水音がいかに効果的な音響を作り出すのかを知りつくした巧みな演出である。そして浴龍池の水深がわずかに0.5〜1mと訊くにいたっては、その舞台道具を雄大に見せる演出家としての上皇の手練の技に舌を巻くしかない。
眼下の浴龍池と万松塢
西山連峰に連なる愛宕山