湖東三山(西明寺・金剛輪寺・百済寺)の秘仏一挙公開を廻った=金剛輪寺
湖東三山(西明寺・金剛輪寺・百済寺)の秘仏一挙公開を廻った=百済寺

2014年4月4日〜6月1日までの2か月間、天台宗の湖東三山〔西明寺(さいみょうじ)・金剛輪寺(こんごうりんじ)・百済寺(ひゃくさいじ)〕の秘仏とされるご本尊が一斉に公開された。


本来であれば御開帳時期は各寺で『住職一代で一度』の公開、つまり数十年に一度、それもくどいようだが三つのお寺で時期はバラバラであった秘仏の公開が。今年度は「湖東三山IC開設と交通安全祈願」を記して三山一挙の特別公開となった。


いつものように家内がその特別公開情報をキャッチ、葵祭で京都へ向かう途上、一時下車し、秘仏を拝観することとなった次第。


お蔭で当日は20年ぶりに新幹線“ひかり”に乗車。米原でJR東海道本線に乗り継ぎ、ひと駅先の彦根駅で降車。


そして事前に予約しておいた近江タクシー(湖東三山巡り4・5時間 19,890円)で5時間弱のスピード遍路の観光、もとい敢行となった。


たいへん親切で朴訥な運転手さんで半日だけの同行であったが、夕方、彦根駅でお別れする時は、何だか少ししんみりとなったものである。


湖東三山巡りの途中、まず、多賀大社へお参りした。

1・多賀大社拝殿・神楽殿・幣殿・本殿
多賀大社 拝殿・神楽殿・幣殿・本殿

古事記に「(子の須佐之男命を根の国に追い払い)故(かれ)、其の伊邪那岐大神(いざなぎのおおかみ)は、淡海の多賀に坐(いま)す」と記される由緒ある神社である。


それからいよいよ秘仏巡りである。


まず、秘仏・薬師瑠璃光如来をご本尊とする西明寺(さいみょうじ)に参拝。

平安時代・承和元年(834)、三修上人が湖東に一寺を建立、仁明天皇より西明寺の勅願を賜わっている。

3・西明寺・惣門
西明寺・惣門

惣門から自然石を敷き詰めた幅のゆったりした石段がのぼっている。

4・二天門へのぼる石段

その最後、急勾配となる石段のうえに新緑の鮮やかな碧に染められた重文の二天門が見える。

5・新緑の西明寺二天門(重文)
新緑に染まる二天門

二天門をくぐって、本堂の位置する内境内へと入る。右手に美しい三重塔が建つ。鎌倉後期の飛騨の匠による建造物で国宝である。

6・国宝・三重塔

本堂は鎌倉時代初期に建立され、別名“瑠璃殿”と呼ばれる。鎌倉様式の釘を一本も使わない純和風建築で国宝に指定されている。

7・国宝・本堂
二天門より本堂を見る

本堂にあがり、回廊を左手に廻り、横から堂内に入る。いよいよご本尊の秘仏・薬師瑠璃光如来に相見えることになる。


薄暗い堂内、薬師瑠璃光如来がしずかにわれわれを見おろす。手を合わせ、お祈りする。

2・龍應山西明寺・薬師瑠璃光如来
西明寺本尊・薬師瑠璃光如来

そのお顔をじっと仰いで、もう生きているうちにこのご本尊にお会いすることはないのだろうなぁと思うと、人の一生って宇宙という悠久の時間の流れのなかでは、ほんの0コンマ0、0、0、0、0、0・・・・の1秒の世界といおうか、僕の肉体を構成する無数の細胞のなかでたったひとつの細胞がひっそりと命を終えていくような、そんな無限大のなかの虚数みたいな・・・、なんだか自分で何言っているのかよく分らないようなとても切ない気分になってくるのであった。

そして、西明寺には蓬莱庭という名勝の庭園がある。

8・蓬莱庭
蓬莱庭

ここの新緑のモミジは素晴らしい。さぞ、紅葉の季節は息を呑むような景観になるのだろうと趣きのある西明寺の石段をおりながら思った。

9・蓬莱庭から本堂へのぼる趣きのある石段
苔と新緑の緑がゆるやかに下る石畳にゆらゆらと反射し、わたしの心中に碧色の陽炎がするりと映り込んでゆく。

肺を思いっきりいっぱいに膨らませてみた。爽快なペパーミントの薫りがキューっと泌(し)み渡ってくるのがわかった。