温暖化防止は待ったなし!(下)
温暖化防止は待ったなし!(上)

 

1988年、世界気象機関(WMO)と国連環境計画(UNEP)はIPCC(気候変動に関する政府間パネル)という組織を作り、地球気候の変化の科学的調査を開始した。その第4次報告書がこの129日から21日に開催されたIPCC第1作業部会で6年ぶりにまとまった。

その結論は「気候システムに温暖化が起こっていると断定するとともに、人為起源の温室効果ガスの増加が温暖化の原因であるとほぼ断定」した。2001年の第3次報告書では「可能性が高い」と含みを持たせた結論であったが、今回は温暖化を科学的に裏づけ、「温室効果ガスの増加の原因が人間活動によるものであることをほぼ断定」した画期的なものとなったのである。

 

報告書の具体的な結論の要約は以下の通りである。(文科省等報道発表資料「IPCC4次評価報告書」)

 

1. 20世紀後半の北半球の平均気温は過去1300年間の内でもっとも高温で、最近12年(95年〜2006年)のうち、1996年を除く11年の世界の地上気温は1850年以降でもっとも温暖な12年のなかに入る

2. 過去100年に、世界平均気温が長期的に0.74度(19062005年)上昇。最近50年間の長期傾向は、過去100年のほぼ2倍。

3. 1980年から1999年までに比べ、21世紀末(2090年から2099年)の平均気温上昇は、環境の保全と経済の発展が地球規模で両立する社会においては、約1.8度(1.1度〜2.9度)である一方、化石エネルギー源を重視しつつ高い経済成長を実現する社会では約4.0度(2.4度〜6.4度)と予測(第3次評価報告書ではシナリオを区別せず1.45.8度)

4. 1980年から1999年までに比べ、21世紀末(2090年から2099年)の平均海面水位上昇は、環境の保全と経済の発展が地球規模で両立する社会においては、18センチメートル〜38センチメートル)である一方、化石エネルギー源を重視しつつ高い経済成長を実現する社会では26センチメートル〜59センチメートル)と予測(第3次評価報告書(988センチメートル)より不確実性減少)

5. 2030年までは、社会シナリオによらず10年当たり0.2度の昇温を予測(新見解)

6. 熱帯低気圧の強度は強まると予測

7. 積雪面積や極域の海氷は縮小。北極海の晩夏における海氷が、21世紀後半までにほぼ完全に消滅するとの予測もある。(新見解)

8. 大気中の二酸化炭素濃度上昇により、海洋の酸性化が進むと予測(新見解)

9. 温暖化により、大気中の二酸化炭素の陸地と海洋への取り込みが減少するため、人為起源排出の大気中への残留分が増加する傾向がある。(新見解)

 

 結論に簡単に目を通すだけで、ぞっとするような内容がいくつも並んでいる。温暖化の結果生じたこと、これから予測されることいずれもが、われわれ人類が産業革命以降、国策として進めてきた近代化、産業化の中で化石燃料を野放図に使用し、熱帯雨林を中心に森林を伐採し続けてきた咎(とが)である。

 

そうしたなかで未曾有のハリケーン・カトリーナを1昨年経験した米国のブッシュ大統領は123日の一般教書演説においてガソリン消費を10年以内に20%削減させる数値目標を掲げ、エタノールなど再生可能燃料の利用促進と乗用車と小型トラックの燃費基準の強化を訴えるなどこの目標を達成することが「地球の気候変動という深刻な課題に立ち向かう助けとなる」と、気候変動と正面から対決する強い姿勢を見せつけた。

 

 さらにIPCCとほぼ同時期に開催された世界中の政財界のリーダーたちが集うダボス会議(世界経済フォーラム年次総会)においても、温暖化をテーマにした17もの分科会が設けられ、いずれも満員の盛況であったという。世界のリーダーたちが一同に会する場で地球温暖化についてこれまで以上の強い関心を示したことは一歩前進ではあるが、それほどに温暖化の危機が身に迫っていることの証でもあり、その評価は複雑である。