清峰高校の教えてくれたもの
学生野球の本分を示した長崎県立清峰高校(2009.4.4)
久方ぶりに高校生野球らしい野球を目にした。4月4日(火)の春季高校野球決勝戦である。試合結果はご存知の通り、横浜高校21点―清峰高校0点と過去最大の得失点差による強豪横浜高校の選抜三回目の優勝で春季高校野球の熱闘の幕は閉じられた。
圧倒的破壊力を見せた横浜高校の打撃陣と清峰高校の肌理細かい打線を完封した川角、浦川両投手の快投はさすが伝統高の底力とただただ、唸るしかない。試合展開は4、5回までは、徐々に点差は開くものの何とか試合の体をなしていた、というよりまだ清峰の反撃に期待をもち続けた。しかし、6回の9得点でこの決勝戦の勝負としての興味は尽きたと云ってよい。6回以降も回を追うごとに点数が重ねられて行った。これまでの私であれば、これほどの大差になれば可哀相な選手たちから目を背けたくなったに違いない。だが、この時は不思議とそう思えなかった。清峰の有迫投手を初めとする投手陣や各野手たちが、この圧倒的、いや暴力的ともいえる試合展開の中で右に左に痛打されたボールを必死に追いかけ、バックホームする姿は決して格好よくなかった。心の動揺を表すかのようにミスも連発した。しかし、選手たちの瞳は最後まで熱っぽく、真剣だった。諦めないというより、最後まで与えられた責任を全うしようと全力を尽くす姿勢に、今の世の中では希少価値となった「泥臭さ」という行為が何故か清々しく見えたのである。外野の芝生の上に無様に転がる姿、パスボールして慌てて後方を振り向きフェンスに駆け寄る様・・・、それは本当に格好悪かったし、あまりにも泥臭く、そして切なかった。
全国の耳目を集める伝統の高校野球の決勝戦である。真にその晴れ舞台で、選手たちはあるいは心の中で涙を滂沱と流し、甲子園の芝生の上を右往左往しながら走り回っていたのではなかろうか。そう思った時、私の目から実際に涙がボロボロと零れだしたのである。
そう云えば、俺の「青春」って格好悪かったよな・・・と心中で呟きながら涙の滴は頬を伝わり落ちていた。いつしか、自分は青春というものを美化する脳内作業を無意識に重ね続けてきたのではないか。格好良く生きなければならぬと思い込むようになっていたのではないか。涙でにじみぼやけた瞳で転々と外野を転がる白球を眺めながらぼんやりそんなことを考えた。そして「青春」時代だけでなく、格好悪くそして泥臭く生きる姿は、実は清々しいのだという気持ちを今の自分は失ってしまった、いや、どこかに置き忘れているのではないかと思いついた。
清峰高校の選手たちと吉田洸二監督にあらためて「ありがとう!」と云いたい。地元の生徒だけで構成されたチームだという。そんな九州の名も知れない田舎町の青年たちが、置き忘れている大切なものを私に気づかせてくれたことに本当に感謝したい。
そして「お前たち、本当に格好悪く、泥臭かったぞ!」
そして、最後に「ありがとうな!」と大声をあげて叫びたい。