「極楽とんぼ山本圭一(38)暴行事件に見る業界の甘えの構造」
最近のお笑いブームのなかで、吉本興業の一人勝ちはこの国の「笑いの質」まで、独占しようとしているかのように、わたしには思えていた。その吉本興業所属のお笑いコンビ「極楽とんぼ」の山本圭一(38)が、少女暴行事件で北海道警函館西署に任意で事情聴取されていたことが、18日にわかった。そして、同社は同日に山本との所属契約解除を発表した。
それとともに、山本がメンバーとして所属していた社会人野球チーム「茨城ゴールデンゴールズ」の解散を萩本欽一氏が発表した。
20日朝のTBSの「みのもんたの朝ズバッ!」で、みの氏が萩本氏と電話でチーム解散についてインタビューしていた。
みの氏は「チーム解散は残念」「政財界の出処進退と異なり潔い」と萩本氏の決断を賞賛し、チーム継続をほのめかした。それに対し萩本氏は、「山本は反省したうえで、将来、山本もメンバーとして入れたチーム再結成も頭に浮かんでいる」とした。ファンからの「解散しないでコール」の殺到におそらく心を動かされ、欽ちゃんも、つい口に上らせたのだろうが、山本が行なった卑劣な行為に関しての言及は二人の会話にはない。
少女は「無理やり暴行された」と函館西署に訴え、17日午前に被害届が提出されているのである。もし、この事件を引き起こした人間が一般社会人で高い地位にあった場合、その人物のメディアでの扱いは、こんな方向のずれたニュースとして取り扱われ、この程度のことですむのだろうか。厳しいバッシングが行なわれたのではなかろうか。そして、その人物が反省したうえで、その当人を入れたチームを再結成するなどということが、許されるだろうか。決して許されはしないであろう。
被害者の方はプライバシーがあるから、こうした事件の場合詳しく事実関係を詮索することは控えねばならぬ。しかし、被害者の心の傷に思いを至すのは、事件関係者およびメディアは当然のことだと考える。わたしは萩本欽一氏について、とりたてて好悪の感情はない。そして、みのもんた氏についても、押付けがましい言動に辟易はするが、芸能界で生き残るにはこうした灰汁(あく)の強さが必要なのだろうと推察する。
しかし、その両人の今朝の電話越しの会話は、仮にも報道番組を自称しているのであれば、まず山本圭一という男が未成年の少女に対し「暴行」を(おそらく)働いたという事実を中心に据えて、論評なりコメントを求めるべきであり、答えるべきであろう。被害者という存在に心を至さない会話、いや、歴然たる報道、それは公共の電波を使った仲間内の「甘えの構造」といってよく、電波を私した被害者無視の「仲間意識」の馴れ合いそのものでしかないと感じた。
(2006年7月20日 読売新聞)
【欽ちゃん「球団解散」・・・「極楽」メンバー不祥事で】
『野球の社会人クラブチーム「茨城ゴールデンゴールズ」のメンバーでお笑いコンビ「極楽とんぼ」の山本圭一さん(38)が未成年者とみだらな行為をしたことに対し、同球団監督の萩本欽一さんは19日、都内で会見し=写真=、同球団を解散する意向を明らかにした。萩本さんは「やっぱり相手の方にも失礼したし、一番野球に失礼したことに責任を感じた。出来ればお客さんに迷惑をかけないようにしたい」と話した。同球団は2005年に創設され、女子選手や元プロ野球選手の入団、選手に企業スポンサーを付け、練習試合でユニホームの背番号の上などに企業名や商品名を表示するなどで話題を集めた。クラブ野球日本一を決める今年8月の全日本クラブ選手権には、2年連続で出場を決めていた。解散時期は未定。同球団の岡本尚博代表は「解散となれば、大変残念だが、監督本人の言葉は重く、責任もある」と話した。山本さんとの契約を解除した吉本興業は19日、都内で会見した。水上晴司取締役は「明らかな犯罪行為で、反省が認められるとしても反社会的行為だった」と謝罪。加藤浩次さんとのコンビも解消すると話した。この問題を受け、フジテレビはバラエティー番組「めちゃ×2イケてるッ!」の22日放送分の山本さんの出演場面をカットし、それ以降も出演の見送りを決めた。テレビ東京も「極楽とんぼのこちらササキ研究所」を20日放送分から取りやめる。』