いざなぎ超える景気拡大ってホント?

 

 大田弘子経済財政担当大臣が1122日、2002年に始まった景気拡大が58ヶ月目をむかえ、いざなぎ景気の57ヶ月を抜き、戦後最長となったと発表した。

 しかし大方の感想は「どこで景気は拡大しているの?」である。58ヶ月といえば約5年間に及ぶが、個人の懐が潤ってきたという実感がまったくないからであろう。一世帯当りの平均所得額(厚労省「国民生活基礎調査の概況」)を見ると、10年前の1996年で661万円、景気拡大が始まったといわれる2002年は前年の602万円から589万円へと600万円台を割り込んだ年である。2003年はさらに579.7万円と落ち込みを見せ、直近で数字が公表されている04年で580.4万円と8年ぶりに7千円の微増に転じたところである。なんと世帯所得は10年前の96年から03年まで一貫して下落し続け、04年でようやく下げ止まったのである。それも2004年までの8年間で81万円(12.2%)もの減少を示している。しかも、その間ずっと下がり続けているといってもよい。この生活実感が、戦後最長の景気拡大と言われても、「いやぁ、本当に景気がよい」とは、とても同調できぬ大きな理由であろう。

また別の視点から見ると、これまでの景気拡大期にあった賃金の伸びが抑え込まれている点が指摘される。97年を100とした2004年の全産業の賃金指数(200616日連合発表)は、1000人以上の企業平均で97.010人から99人の企業平均で95.0、全平均で95.77年前の水準を5%ほど割り込んでいるのである。このことは企業収益が好調と言われようが、世帯のみでなく個人の懐が暖まっていない証であり、大方の人の景気実感とぴったり来る数字なのではなかろうか。企業の内部留保は厚くなり、企業体質は強化されたものの、個人の生活意識調査(「国民生活基礎調査の概況」)で「苦しい」が2000年の50.7%から2005年の56.2%へと拡大していることと平仄(ひょうそく)が合う。

さらに格差の拡大が、その景気実感に輪をかけていると言える。格差社会の代表的指標であるジニ係数(当初所得)も1981年の0.35から直近数値の2002年の0.498へと一貫して上昇してきている。格差がきついといわれる0.40.5の範囲の危険水域の上限に達し、現時点では所得分配の是正が必要とされる0.5をおそらく越えているものと思われる。その数字も、六本木ヒルズ族に代表される一部の成功者たちの浮かれぶりとわが身の現実との格差が実感の数字として表されているよい例であろう。

 こうして異なった角度からいろいろな数字を見ると、いざなぎ景気を超える景気拡大といわれても実感できぬ真相が少し見えてくる気がしてくる。政府がどんな数字を発表しようが、懐はやはり「う〜っ、ブルブル、寒い!」なのである。

 

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