11月4日の米国大統領選挙で民主党候補のバラク・オバマ上院議員が第44代米国大統領に就任(就任式2009120日)することが決まった。

 

大統領選の投票を3週間後に控えた1010日から12日にかけ米ギャラップ社が行なった世論調査(GALLUP POLL)のなかに、以下の質問が入っていた。「新大統領が来年1月にホワイトハウスを引継いだ際、最優先にすべきなのは、どの問題だと思われますか」と。選択肢は「米国の経済の安定化」「イラクおよびアフガニスタンで行われている戦争への対処」「医療制度の改革」「米国向けの新しいエネルギー源の開発」(以上、提示順不同)、または「それ以外」となっていた。

 

16日に公表された調査結果は「米国成人全体」で最優先すべき課題は「経済の安定化」が68%と、二番目のイラク等戦争への対処」の12%を大きく引き離し、金融危機下の米国経済の建て直しが国民的な焦眉の急の政策課題であるとの国民の意識を示した。当該課題について詳しく見ると、オバマ、マケイン両候補支持者においても各々、69%、68%の比率で最優先であると回答され成人全体の数字とほぼ一致しており、支持政党や支持者に関係なく国民的喫緊の政策課題であると認識されていることがわかる。

 

共和党のブッシュ政権が市場原理主義を至上のものとし「小さな政府」の運営を続けた結果のマネーゲームの横行と拝金主義の蔓延、その行き着いた先の極端なまでの格差の拡大。そしてリーマンブラザーズの倒産に象徴される市場万能主義の破綻。

 

114日、米国民は市場原理主義による「小さな政府」より政府の関与を増やすことを公約とするオバマ氏の「大きな政府」を選択した。マケイン氏は選挙期間中、オバマ氏の「大きな政府」を前提とした経済政策の考え方に対して、「それはまるで社会主義だ」と攻撃した。米国民にとって「社会主義」という言葉は、建国の精神から言っても本来、本能的に拒絶反応を起こす言葉である。しかし、米国民は「市場原理主義」よりマケイン候補のいう「社会主義」を選択した。

 

それほどに米国を席捲した暴力的なまでの市場原理主義の行き過ぎに対し、国民は「No!」を突きつけたのである。約1前の昨年12月に行われた米紙ウォールストリート・ジャーナルとNBCニュース合同の最新世論調査での次期大統領を選ぶ際に最も重視する課題が、「経済と医療」が52%、「テロリズムと社会・倫理上の問題」が34%であったことを考えると、今回のギャロップ世論調査が「経済と医療」と課題をくくれば、約72%、「テロやそれ以外」の総ての課題で28%という結果を見れば、いかにこの1年間における市場原理主義という病魔が米国社会を蝕んできたかが分かる気がする。