鳩山首相は、5月20日、国際宇宙ステーションでミッションを果たしてきた山崎直子宇宙飛行士の表敬訪問を受けた。タイトルの発言はその時、山崎さんに対してこの国の首相から発されたものである。
首相官邸のHPの「会議等一覧」のなかの「政策会議等の活動」をクリックすると、「宇宙開発戦略本部」のタイトルの下に、下記文言が記されている。
「宇宙基本法(平成20年法律第43号)に基づき、宇宙開発利用に関する施策を総合的かつ計画的に推進するため、宇宙開発戦略本部が設置されています。宇宙開発戦略本部においては、
1.宇宙基本計画の作成及びその実施の推進に関する事務
2.その他宇宙開発利用に関する施策で重要なものの企画に関する調査審議、その施策実施の推進及び総合調整に関する事務
を実施しています。」
そして、国の宇宙開発の基本方針、総合的な施策と計画を定める「宇宙基本計画」を策定する「宇宙開発戦略本部」の本部長こそ、誰あろう、内閣総理大臣たる鳩山由紀夫、その人である(ちなみに副本部長は、内閣官房長官たる平野博文と宇宙開発担当大臣たる前原誠司(国交大臣との兼務))。
「宇宙開発戦略本部」設置の根拠法である「宇宙基本法」は2008年5月の第169回国会にて、時の政権与党であった自民党、公明党の両党に加え、野党であった民主党も賛成して成立した法案である。
その基本法の第3章第24条において「宇宙開発戦略本部は、宇宙開発利用に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、宇宙開発利用に関する基本的な計画(以下「宇宙基本計画」という。)を作成しなければならない。」と、「基本計画」の作成が義務付けられている。
基本計画案が平成21年4月28日付で内閣官房宇宙開発戦略本部から公表され、広く国民からの意見が募集された。
その基本計画案なかの「第3章 宇宙開発利用に関し政府が総合的かつ計画的に実施すべき施策」において有人宇宙活動についての基本的な考え方や施策が述べられている。概略すると、以下の通りである。
「有人やロボットを活用した宇宙活動の推進により、人類の活動領域を拡大することを目指すこととし、長期的にロボットと有人の連携を視野に入れた、平成32年(2020年)頃のロボット技術をいかした月探査の実現を目指した検討を進める」、「有人を視野に入れたロボットによる月探査の検討を進める(第3章2(4)?(b)項に記載)」(22/51頁)と。
そして、第3章の2「各分野における具体的施策の推進」の(4)「世界をリードする先端的な研究開発の推進」(30/51頁)のなかで、「世界をリードする先端的研究開発」として、主として以下の3つのプログラムで対応するとして、
F 宇宙科学プログラム
G 有人宇宙活動プログラム
H 宇宙太陽光発電研究開発プログラム
を挙げている。Gの「有人宇宙活動プログラム」こそ、鳩山首相の言う「日本はやらないのかね」に対する答えだと思うのだが・・・。
その有人宇宙活動プログラムの推進のために、「有人を視野に入れたロボットによる月探査」を重要な目標と位置付け、
・ 第1段階(平成32年(2020年)頃)として科学探査拠点構築に向けた準備として、我が国の得意とするロボット技術をいかして、二足歩行ロボット等による高度な無人探査の実現を目指す。
・ その次の段階としては、有人対応の科学探査拠点を活用し、人とロボットの連携による本格的な探査への発展を目指す。
と、基本的な考え方(案)がしっかりと示されている。
山崎直子宇宙飛行士の表敬訪問を受ける前に、ひと言、首相の側近たちがこうした概略を説明しておれば、タイトルのような「おバカな質問」など、しなかったのではないかと、ブレーンにも恵まれぬ鳩山首相に同情しないわけでもない。
それにしても、首相としての自覚の前にあまりにも勉強不足であり、国を運営する責任の欠片もその言葉に「皆無」なのをここまで見せつけられると、やはり、もう、国益のために鳩山由紀夫という人物には、首相の座から降りてもらうしかない。いや、政治家という彼にはどうみても不適な仕事から引退してもらわねばならぬ。
「日本はやらないのかね?」
山崎さんもさぞかし答えに窮しただろうなぁ・・・。そして、日本の総理の資質に、唖然としたに違いないことは明らかである。