昨年125日、TBSは「報道特集NEXT」において「ブラックノート」という偽造紙幣詐欺事件のドキュメントを報道した。その取材の中で容疑者宛ての郵便物を無断開封したり、詐欺であることを突き止めた段階でも警察への通報を怠り、容疑者の国外逃亡を許した。その取材過程や報道姿勢について、TBS当局やBPO放送倫理・番組向上機構)へ視聴者からの批判が相次いでいるという。

 

TBSはこの3年ほどを見ても、報道機関として首を傾げざるを得ない問題をたびたび引き起こしている。以下にその主なものをいくつか列挙する。

 

  2007122日、328日の「みのもんたの朝ズバッ!」において、不二家の期限切れ原材料の使用問題につき、みのもんたが捏造とも思える情報を元に同社に対し「廃業発言」を迫るがごとき厳しい批判を行ない、その信用を著しく貶めた。

  200765日、関東アマチュア選手権ゴルフ大会に出場する石川遼氏の同伴競技者などに、「ピンポン!」関係者がプレー中の盗聴を依頼。

  20082月「みのもんたの朝ズバッ!」で放映された「幼児割り箸事故の医療裁判判決報道」における判決要旨の不正確な理解に基づく不適切なコメント。

  2008年9月に起きた千葉県東金市の児童殺害事件で、TBS女性記者が知的障害を持つ容疑者をカラオケ店に誘い、それを映像に納める。障害者が被疑者という状況のなかで、弁護団がTBSの不適切な取材や報道のあり方に対しクレームを呈したが、同局は当該映像を流し続けた。

  200810月、「サンデージャポン」において、大阪府門真市の保育園の畑が道路建設用地として行政代執行で強制収用される場面で、収容前日に現場に並ばせた園児らの映像をあたかも収容当日のことのようにして放送。

  2009411日、『情報7days ニュースキャスター』で、国と地方の「二重行政の現場」の具体例を演出するため、大阪府南部を通る国道26号と大阪府道の清掃作業において常識ではあり得ない清掃作業の手順を業者に依頼し、そのように行なわせ、その映像を流した。橋下徹大阪府知事は「行き過ぎた表現と(TBSは)言っているが、事実ではないわけだから虚偽だろう。私的流用がなければ裏金じゃないといっている行政の弁明と同じ」と厳しく糾弾した。

 

以上にあげた事例意外にも不適切な報道は多数あるが、前掲はその一部に過ぎないことは、正直、驚きを隠すことはできない。

 

 こうした不正確、不適切な報道や取材のあり方については、BPOの放送倫理検証委員会や放送人権委員会から幾度も勧告や見解が出されている。そして、その都度、TBSは神妙な反省の弁と全社を挙げて再発防止に努める旨、言明して来たのは周知のことである。

 

 それにも拘らず、また、「ブラックノート」である。仏の顔も三度までという諺があるが、こうやって見ると、TBSの社内には仏様が無尽蔵にいらっしゃるとしか思えない。冗談はさておき、これだけ性懲りもなく反省もなくこうした報道を続けるTBSという企業は、その体質ならびに社員の意識そのものに問題の根があるとしか考えようがないのである。

 加えて致命的なことが、この繰り返される不適切な報道がジャーナリズムの根本精神に基づくものではなく、視聴率を稼ぐためのコマーシャリズムに毒されたものなのではないのかということである。

 

 放送法は第1章の2「放送番組の編集等に関する通則」の国内放送の放送番組の編集等」において第3条の2で次のように規程している。

 

放送事業者は、国内放送の放送番組の編集に当たつては、次の各号の定めるところによらなければならない。

1.公安及び善良な風俗を害しないこと。

2.政治的に公平であること。

3.報道は事実をまげないですること。

4.意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること。

 

この条文を素直に読んで、これまでの多くの番組におけるTBSの不祥事を一覧すれば、少なくともこの企業は、その各号を遵守する気などないのだと見られても仕方がないと言える。

 

 電波法は、その第二章「無線局の免許等」の第13条「免許の有効期間」において、「免許の有効期間は、免許の日から起算して五年を超えない範囲内において総務省令で定める。ただし、再免許を妨げない。」と規程している。これまでも放送事業者の免許更新は五年ごとになされているはずなのである。しかし、遵法精神のない、懲りない放送事業者であれば再免許を交付する必要はないのである。

 

 20081031日に直近の再免許の更新は行なわれた。その際、総務省は過去の更新時に行なってきた個別放送局に対する事情聴取という再免許ヒアリング手続きを踏むことなく、免許交付を行なった。デジタル化移行を直前に控える特別な時期であるとは言え、度重なるTBSの不適切、いや悪質とも言える取材・番組編集のあり方に対し、免許交付権限を有する総務省が最低限のチェックすらせず免許再交付を行なったことも、TBSのコンプライアンス意識の欠如を助長したと言えなくもないのである。