福田康夫氏の正論

 李外相は7日の記者会見で、小泉総理の靖国参拝問題に関しドイツ当局者の話として、「ドイツ人も日本の指導者がばかげた不道徳な行為をなぜ行うのか理解できない」と強調、「ドイツの指導者は戦後、ヒトラーやナチスを崇拝していない」などと発言したとのニュースが飛び込んできた。相変わらず中国の小泉外交に対する批判は激越で、日中関係はとうとう度し難いところまでに冷え込んでしまったように見える。

 小泉総理一人の「頑迷固陋な依怙地」が日本の国益を大きく毀損しようとしている。この道を進み続ければ、日本は確実に世界で孤立することは確かである。ただ唯一の救いは情けないことだが、中国政府の大人の対応であると云うことだ。李外相の激越な言葉とは裏腹に中国政府の対応が冷静に先を見通した姿勢で終始し始めているように思えることである。つまり、小泉氏が総理でいる間は放っておけ、次の首相になるまでは中国側からこれ以上、殊更に日本を追い詰め日中関係を悪化させようとすることは得策でないとの大人の判断がなされているように思える。残念であるが、その中国の百年先を見詰めた対応が日中関係を抜き差しのならぬところまで追い込まずに、崩壊を免れていると云えよう。

 こうしたなかで、数日前の福田氏の講演会における発言は、この外交的国難を救ってくれる道筋を示したものとして、後世、高く評価されるべきものと云える。「日本の今後の成長の源泉は中国を初めとしたアジア諸国との関係充実のなかにこそ見出される」。稚拙な小泉外交と竹中氏の米国を向いた経済政策が米国に隷属する国家にこの国を貶め、アジア諸国の尊敬を見事に喪失せしめた現在、この福田氏の発言は日本を尊厳ある国家に引き戻す最初の第一歩であるように思われるのである。独裁者的総理になってしまった小泉総理に久しぶりに正面から堂々と物申す、真に本物の政治家の発言を聴いた気がする。先の総選挙での刺客騒ぎはお祭りではない、ファッショの萌芽であった。

 その後の自民党政治家が小泉政策に対し表立った抵抗をしなくなったことに一国民として尋常でない恐怖を感じる。これは本当に九月には小泉総理に退出してもらわねばならぬ。そして、後継者はそのファッショの尻尾を引き摺ることのない人物でなければならぬ。最近の物云わぬ自民党、自ら墓穴を掘り政治腐敗の追及が出来ぬ民主党と云った政治情勢の混乱を目にすると、ますますその意を強くせざるを得ないし、中国や韓国の関係を考えると九月まで悠長に待ってなどいられないと焦慮の感に襲われる。

 そして今回、福田氏に政治家像のひとつの理想像を見たような気がする。まず、メディアに媚を売らぬ。やたらTVに顔を出し、底の浅い見え透いた議論とも云えぬコメントを垂れ流す似非政治家を見せ続けられると、その控え目な姿勢が際立って高邁に見えるから不思議だ。加えて官房長官時代のメディア対応も水際立っていた。次に出処進退のあり方を自らの美学として持っていると思われる点である。今回の民主党の偽メール事件における民主党執行部の対応と対比すれば、そのことは一層、明瞭である。最後に、この点が最も大切なことだが、権力に対する我欲がギラついて見えないことである。私欲でなく国益を一番に考えて判断のできる政治家が少なくなった今日、福田氏の登場はこの国難の時代にどうしても必要であると考えるに至った次第である。誠に申し訳ないが福田氏には日本国のために一命を捧げていただきたいと心底、強く願うところである。