道草遍路 四国８８ヶ所霊場 第８７番札所 補陀落山観音院 長尾寺

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香川県さぬき市長尾西６５３

８７　長尾寺

 

長尾寺御朱印

８８番大窪寺から車で３０分弱、第８７番札所　補陀落山（フダラクサン）観音院　長尾寺へ到着。琴平電鉄・長尾線の終点、長尾駅から徒歩２００ｍの平坦な町中にあって、山深い大窪寺からするとあれも遍路、これも遍路といった感じで、すべてが難所じゃないんだと実感するお寺である。

左側は駐車場

仁王門からの外観はこぢんまりとしたお寺で、たとえて言えば“おらが町”のお寺といった第一印象である。

コンパクトな佇まいの長尾寺

その仁王門の前に２ｍほどの高さの凝灰岩の石柱が二基立っている。経文を埋納する経幢（ｷｮｳﾄﾞｳ）というものだそうで、仁王門に向かって右手の経幢が弘安９年（１２８６年）、鎌倉時代後期のもので高さは２５３ｃｍと高い。

右手の経幢（きょうどう）

向かって左、西側の経幢は高さ２００ｃｍ、弘安６年（１２８３年）の建立で、きわめて古い時代のものということでちょっと珍しいので、境内に入る前によく観察されたらよい。

左手の経幢

仁王門は威圧感を感じるどころかかわいらしいと表現してよい親近感がもてるもの。

この仁王門、なんともかわいらしい

そして、門をくぐる真上には吊り梵鐘が下がっている。手が届かないんだけど・・・、どうやって衝くんだい・・・・・・いやはや不思議感を催させて面白い。

頭上の梵鐘

仁王門をくぐるとすぐ右手に大きな楠が立っている。

こんなに大きいんです、この櫲樟（くすのき）　本堂から仁王門を

その陰を落とす石畳の参道の先にはエッというほどの境内が東西に開け、ここでまた意外感を演出。何だか、お遍路寺というよりサプライズを楽しませる趣を有すとても開放的で気分の良いお寺なのである。

左から護摩堂・本堂・大師堂

本堂でまずお参り。もちろん、般若心経と光明真言“おんあぼきゃ べいろしゃのう まかぼだら まにはんどまじんばらはらばりたやうん”を三度、唱える。

近寄ると迫力がある本堂

次に本堂の東側、右手にある大師堂へ。

本堂前から大師堂

大師堂のさらに右手に薬師堂と東門がある。

境内東側に薬師堂と東門

そこで踵を返して本堂の前を過ぎ、護摩堂へ参拝。

本堂前から護摩堂

この護摩堂の左手前に妙なパネルが見えた。近づくと、何やら平安装束の女子の体裁。

ややっ・・・何者じゃ？

目を凝らすと、静御前の剃髪塚との説明版が目に入る。小高く盛ったところに苔むした石塔がたっていた。

なんとあの静御前の剃髪塚とや・・・はてはて？

義経と別れ、鎌倉へと移送された静御前が、頼朝の前で“しずやしず　しずのおだまき　繰り返し　むかしを今に　なすよしもがな”と詠いながら哀しく舞った逸話は有名であるが、その後、この讃岐に来ていたことはあまり知られていない。

興亜地蔵尊と静御前の剃髪塚

わたしはもちろん、讃岐出身の家内もまったく知らなかった。

そして・・・なんと、あの静御前がこの、この長尾寺で得度して尼となり、その際の断髪した髪をここに埋めたのだという。長尾寺の片隅に都中に美しい舞の名手として名をとどろかせた白拍子、静御前のぬばたまの黒髪がここに埋まっている・・・ロマンである。

境内西南隅に天神宮

仁王門のかわいらしさ、吊り梵鐘のサプライズ、狭い門から入って一挙に広がる境内の解放感など意外感満載の長尾寺であったが、この剃髪塚、これは、ほんとにびっくりポンな出来事であった。

 

寄り道遍路第一弾の静御前・薬師庵は次回ブログにてご案内。そこはとても美しく抒情あふれるところでしたね。