古都散策――常照皇寺」

 

 

 7月初旬の梅雨まだ空けやらぬ季節に常照皇寺(右京区京北井戸町)を訪れた。京都市街から北山杉を車窓に眺めながら周山街道(国道162号線)を車で北へ約1時間余、大堰川(桂川)を越える。そこにバス停駅周山があるが、そこを右折し国道をはずれ桂川左岸沿いに10分ほど行った山の麓に勅使門へ登る石段がある。常照皇寺は、後醍醐天皇と皇統を争った北朝の初代天皇、光厳(こうごん)上皇により貞治(じょうじ)元年(1362年)に開山された。嵐山にある臨済宗天竜寺派に属する禅宗寺院である。

 

 

常照皇寺入口

常照皇寺 大広間

常照皇寺 襖絵

 

 

 

 

 

 

 

 

境内には、国の天然記念物である「九重桜」をはじめ、御所から株分けしたといわれる「左近の桜」や一重と八重が一枝に咲く「御車返しの桜」など桜の名木があった。ただ、季節が異なったため花を見ることはなかった。その代わり、寺内には山雨の降り濡(そぼ)つ音と河鹿(かじか)の啼き聲が響くのみで、静寂というかすかな音楽に包まれていた。そして、わたしは平安朝の殿上人のように人っ子一人いない大広間を独り占めし、静謐(せいひつ)というこの上ない清浄な空気を思いがけず身に纏(まと)うことができた。

 

 

玉座 

常照皇寺枝垂桜(御車返し桜)室内からの桜 

 

 

 

常照皇寺 河鹿

常照皇寺 渡り廊下

常照皇寺 裏山