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そして最後に登場する大物がオリックスの宮内義彦会長である。

 

今をさかのぼること11年前の1996年に政府内に行政改革委員会規制緩和小委員会という委員会があった。

 

その行政改革委員会規制緩和小委員会は平成8年7月25日に規制緩和に関する論点公開(第4次)をしている。そのなかで今後規制緩和すべき対象として38項目にのぼる一覧リストが掲げられた。その「4.運輸」のなかでタクシー事業の「参入規制の見直し」と「価格規制の見直し」について言及がなされており、現行のタクシー行政の骨格がこの提言で示されたと言ってよい。

 

その提言を受けて同年12月の第二次行政改革委員会の意見はまとめられたのである。そのなかでタクシー事業の規制緩和については「需給調整規制は、タクシー事業者間の有効な競争を促進し得ないことから、利用者利便の向上を阻害しているばかりでなく、労働条件の改善に十分寄与しているか疑問がある」とされ、「量的規制である需給調整規制を廃止」することが謳われた。

 

また価格規制についても、「利用者にとって選択しやすい内容とするとともに、できる限り事業者の自主性が尊重される多様な運賃水準の設定が可能となるようにすべきであり、当面はゾーン制により緩和を図ることとし、将来的には上限価格制に移行すべきである」と、現行の運賃認可方式への見直しが提言されたのである。

 

 このときの規制緩和小委員会の座長こそ宮内義彦現オリックス会長(当時社長)であった。同氏はその後、規制改革委員会委員長、総合規制改革会議議長、規制改革・民間開放推進会議議長を歴任し、わが国の規制緩和をドラスチックに推進したことで「ミスター規制緩和」と呼ばれることになった。

 

 さて、数あるオリックスの子会社のなかに100%子会社で「オリックス自動車(旧オリックス・オート・リース)」という会社がある。その採用情報「リクナビ2008」のなかで、同社は次のように自社のことを紹介している。

 

「オリックス自動車の管理台数は57万5千台! その台数は日本全国のタクシーの台数26万台のなんと2倍以上! オートリース業界ではダントツのNo.1です。そのスケールメリットを活かし、当社は常に新しい挑戦を続けています」と。

 

「全国のタクシー台数の2倍以上」と、ずいぶんと意味深の表現で全国一位の業容を誇らし気に説明しているのである。そして正直、「う〜ん?」とその説明文には首を傾げざるをえないのである。「ミスター規制緩和」が11年前に提言をまとめ車両台数の自由化を進め、新規事業者の参入規制も緩和した結果として、当然のことだがタクシーの車両台数は増加していった。

 

そしてタクシー会社は車両をリースでまかなうところも多いということを知っている人はあまり多くない。

 

 11年前に提言された「量的規制である需給調整規制を廃止」の真の狙いは何であったのか。現在のタクシー業界の惨状を見て、どこにこの規制緩和のメリットがあったのか、素直に首を傾げざるを得ないのである。

 

 同氏は一年前(064月)のインタビューで、「規制緩和の進展が格差拡大を助長しているという議論がある」との質問に対し、「格差とは所得再配分の問題だ。税制や社会保障を通した格差是正のために政治は存在する。生産(経済)の方の問題ではない」と、経済界には「格差是正」の責任はないと「美しくない」言葉で、見事に一刀両断したのである。

 

 タクシー運賃の値上げの動きを通して、それに係わる「美しくない」人々がいることをわれわれはよく知っておかねばならない。そして「規制緩和」という美名の下で「市場原理主義」を突き進めた当然の帰結として、「格差社会」が生まれたことの責任を誰が持ち、そのことで誰が得したのかをわれわれは過去を振り返り、もっと冷静に見極めておかなければいけない。