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京都市東山区今熊野剣宮町33-22
山科方面の勧修寺(かじゅうじ)や随心院を訪ねるに際し、お昼を「澤正」でいただいた。「澤正」は明治42年創業のそば菓子処で「そばぼうろ」は当店の商標登録だそうだ。今回、訪れたそば茶寮は数年前に菓子処から5、6分のところに昭和初期に建てられた和風家屋を舞台装置として始めたという。
店の前まで車で乗り付けることはできない。足元が少々不如意のわたしにはアクセスにやや難があったことと、その後、入店した建物の造りと車から店までのアプローチの無粋さに正直、落差を禁じ得なかった。
しかし、店の前に立つと鮮やかな紫色の暖簾が美しい。暖簾をくぐり屋内へ一歩、足を踏み入れれば、昭和初期のハイカラとはまさにこうした造りとインテリアだったのだろうと思わせる演出であり、これはこれでよいのだと思った。
今回は家内とわたしの二人旅であったので、事前に3800円の創作そば会席を予約していた(そば会席は二人から。前日までの予約が必要)。われわれの席は窓際の縁側風のところにあり、外の竹藪が見えてなかなかの風情であった。また、懐かしい硝子戸でクルクル回す折れ曲がる真鍮製の鍵に気づいた時には、料理への期待よりもこの硝子戸に強烈な郷愁を感じたものである。
硝子戸越しに竹藪を見る
テーブルには豊穣月のお献立が
さて、そば会席はその名の通り、「創作」尽くしの目新しいものであった。蕎麦を素材にしたにも関わらず、和風ではなく、この館がかつて迎賓館として使用されたことを想起させるような、洋風会席を創り上げた料理人に敬意を表したい。とくに、八寸に代表される一品ごとの色づかいと、細かい手作業、蕎麦という素材を存分に駆使した料理には、本当に頭が下がった。蕎麦の出来は腰もしっかりとし、わたしの好みに入るものであった。
八寸の図が美しい
八寸:人参の和スープ
蕎麦パンのカナッペ・野菜の春巻き・林檎と鳴門金時の甘酢漬
銀杏と松の実と葡萄の白和え
木の子と山東白菜菜のお浸し
南瓜のニョッキ:柿のヘタや紅葉もそば粉で作る匠の技
温鉢:小芋と紫ずきんの揚げ饅頭(そば餡仕立て)
小鉢:更級変わりそば(そばの実の芯の白い部分)・白葱のマリネ
揚げ物:椎茸のクリームコロッケ
手打ち二八そば
腰があっておいしい
温かい汁そばもあります(選択可)
ちょっと重い蕎麦ごはん
そばの栗餅:おいしかった!!
まぁ、若い人であればお昼でもこれぐらいの量は何ともないのだろうが、そば会席というには、やはり少々、胃に重すぎる献立であった。また、わたしには揚げ物の椎茸のクリームコロッケは不要であった。いつも思うことだが、天麩羅とは異なりこの手の洋風油ものはどうも、蕎麦料理にしっくりこない気がするのである。
さらにあえて難を申せば、お昼のメニューとしては3800円のコースでも量が多過ぎて(他に5700円のコースがあった。夜は5500円と7600円の2コース)、かなり後半は半分くらいしか口に入らず、また蕎麦の後の御飯は余計である。それと、旅行客には二時間という昼食の時間は、少々、長すぎたというのが正直なところである。逆にそのことは、それくらいゆっくりと時間をかけて堪能すべき料理であったということである。
お昼は、単品物が注文できるというので、今度は純粋に蕎麦を楽しみに行ってみるのもよいと思った。
何はともあれ、前日の夜を軽めにするなり、朝食を超軽めにするといった工夫が必要であったと、このたびは反省したところである。
でも、昭和レトロの空間で作務衣の従業員に料理の内容の説明を受けながら、木枠の硝子戸越しに竹藪を眺めての昼食は、それなりに京都の風情が楽しめて良ろしおしたえ!!最寄りのお寺の泉涌寺や東福寺へ参拝する際、時間に余裕のある方は、ぜひ、一度、お試しになってはいかがでしょうか。