霧ケ峰高原の北西部、標高1600mの高地に八島ケ原湿原はある。夏の季節でいうと前回は3年前の2014年の8月2日に訪れていた。その時の様子は当ブログの「2014年8月上旬、霧ヶ峰高原・八島ヶ原湿原の植物・昆虫図鑑 」(2014.8.22・23アップ)というタイトルで5回にわたり高原の夏の花や昆虫を紹介している。
2017年は8月は蓼科も雨のつづく日々であったが、その不順な天候の合間にふと青空を見せた19日に八島湿原へと向かった。
途中のビーナスラインも天候が不安定でお盆過ぎということもあるのか、心なしか車の台数が少ない。
だけども、車山から霧ケ峰へと向かう車窓から見る景色はいつも心が和む高原の景色である。
もう少し青空の面積が広ければなどと今年は贅沢なことは言っていられない。晴れ間が見えるだけで十分、窓を開ける。高原の風が車内になだれこむ。さわやかの一言である。
そして、眼前に展がる景観は千数百メートルという高山でありながら、山の稜線は険しさの一片も見せず、なだらかな丘が一面につづく丘陵地帯を駆けるようである。
自然と気持ちがやさしくなり、都会では車の間を縫って走る単車はただただ鬱陶しいだけであるが、ここではなぜか風を切って疾駆する単車が似合う。
2017年の残り少ない夏、とんと青空に縁のなかった今年の信州の夏。そんな夏だったからこそ、風を切る気分にひたりたくて家内の手作り弁当を携えて、八島湿原へと車を駆った。
午前11時に八島湿原のビジターセンターの駐車場へ到着。
センターで現在の湿原に咲く花のパンフレットを200円で購入。これは湿原散策にはぜひ携行すべき優れものであり必需品である。
さて、そのパンフレットでは湿原一周にかかる時間は90分と案内されている。
そのルートをわれわれ老夫婦は花を愛で、蝶を愛で、はたまた足の悪いわたしが膨大な量の写真を撮りまくるものだから、なんと4倍もの6時間をかけての一大征途となってしまった。とくにたくさんのアサギマダラがひらりひらりと舞う姿を写そうと難儀して、時間を食ったのが大きな原因だが、デジカメ写真の出来はそれなりであったものの、その優雅な乱舞のさまはしばらく立ち止まって見惚れる価値は大いにあったと感じた。
ただ、そんなおっとりした連中に今年の自然はそうそう甘い顔は見せるはずがなかった。あと400mほどで出口というところで、一天にわかに掻き曇り、突然、大粒の雨が矢のように天から落ちてきた。
木道が濡れると杖を突きながらのわが身は非常に歩きにくいというか、杖の先が滑って危険でさえある。なんとか足早で、といっても普通の方の歩行速度程度で一心不乱にビジターセンターを目指した。
センター横の休憩所のテーブルに落ち着いたのは17時。もう人影もない。
ここをスタートしてからちょうど6時間。よくぞ歩いた、よくぞ粘った、よくぞ自然と抱き合って転びまわった。雨に濡れた衣服をタオルで拭きながら、雨でずぶぬれになって遊んだ子供の時分に覚えた満足感のようなものを感じた。
ずいぶんと前置きが長くなったが、次稿から本題の2017年の百花繚乱の写真を掲載していくことにする。